ハロプロメンバーの人気度推移に関する分析 ハロプロ楽曲大賞のデータより

はじめに

ハロプロ楽曲大賞なるネット投票企画が2002年より毎年行われ、多くのハロプロファンが投票を行っている。当該年度ハロプロというくくりで発表された楽曲のなかでもっともよいと思う曲に投票し、ハロプロファン内での楽曲の順位を定めようとする企画である。ハロプロファンを対象としたネット投票企画では継続性もあり、規模、および不正投票に対する対応もしっかりしているなどの点で信頼性も高く、もっとも著名な企画の一つである。

この企画に2004年より「推しメン」部門が登場した。これは参加者の属性の傾向を見ようという趣旨で行われているものであり、ハロプロファン内での人気メンバーを決めようという趣旨のものではない。それでもハロプロファン内でのメンバー別人気、支持度の動向を知る上では興味深いデータとなっている。

ここではこのデータを用いて、ハロプロファン内でのメンバーの支持傾向を見ることにする。なおここでは各メンバーの得票数を有効回答数で割った値を各メンバーの「支持率」と定義する。このメンバーごとの「支持率」が本稿の分析対象となる。

ただしこのデータを見る上では一定の留保が必要である。ネット投票一般における注意点であるが、ネットでの投票行動には一定の偏りが見られるため、単純に投票結果をもって、ハロプロメンバーの一般的な意味での人気度を測ることは難しい。したがって本考察も、誰が誰より人気があるといったメンバー内の人気度の優劣を見る見方は極力控え、2004年から2007年までの推移を中心にデータを見ることにする。なお本企画は毎年年末に行われるため、2004年のデータとは2004年12月段階のデータを意味している。

さしあたりこのハロプロ楽曲大賞の持つ投票者特性について簡単に考察しておく。本企画は発足当初は投票フォームを設置しておらず、投票者が開設しているウェブサイト上に結果を記載することを前提としていた(メールでの受付も行ってはいた)。こうした発足当時のあり方は現在でも大きく影響をもっており、多くの投票者は自身のブログ上で本企画への投票結果を公表している。つまり本企画は一般的なネット投票と比べて、ハロプロ関連のブログ開設者の割合が多いことが想定される。つまり投票者はハロプロを、テレビなどを中心に「消費」するだけの比較的ライトなファンよりも、ハロプロを題材に「語る」ことを好む比較的熱心なファンの割合が相対的に高いことが想定されるのである。こうした傾向は投票結果に端的に表れている。

その典型は松浦亜弥の支持の相対的な低さである。2007年の松浦亜弥への投票数は766票中19票であり、順位にして18位であった。一般的知名度やライブでの動員実績などと比べて、明らかに低い結果となっている。このデータをもって、松浦亜弥の人気はたいしたことがない、という結論を導くのではなく、このデータの持つ特性が現れた結果であると見るべきである。また同じく2007年段階で、バラエティ番組などでの露出の大きさから一般的な知名度を大きく向上させた里田まいの支持も低い。

また上記データの特質よりハロプロと他の歌手・タレントとの相対比較はこのデータからはなしえない。ハロプロ・モーニング娘。の一般的な人気低下が起こっているのか、どの程度なのかといったことについて本稿は関心の対象とはしない。あくまでハロプロファンの内部におけるメンバー支持の移動が本稿の関心領域となる。

多様化する支持

近年ハロプロ自体の市場は縮小傾向にあるが、ファンの志向は多様化しているように見える。かつてはモーニング娘。がハロプロの絶対的中心であり、かつその中の中心=「エース」の地位も明確にあった。ハロプロを語る際の焦点がある程度見えていた。ところが近年はモーニング娘。のあと世代のグループ(Berryz工房や℃-ute)といったグループがハロプロファンの間での支持を拡大し、モーニング娘。の絶対性が薄れ、ハロプロの「中心」が見えづらくなってきている。こうした傾向はメンバー別の支持率にも表れている。

メンバー別支持率上位10位までのメンバーの占有率の2004年から2007年までの推移を見てみよう。

2004年段階では6割を超えていたが、年々低下をし、2007年においては5割を割り込んでいる。また支持率上位メンバー10人の中に占めるモーニング娘。関係メンバー(現役メンバー、卒業メンバー)の人数も2004年9人、2005,2006年10人、2007年7人となっている。

モーニング娘。の威信の低下

前節でも述べたようにかつてハロプロ内での絶対的存在だったモーニング娘。の支持が低下していることが伺える。このことをより明確にするため、モーニング娘。在籍メンバーの支持率の合計を「モーニング娘。支持率」としてその推移を見てみよう。なおモーニング娘。はメンバーの入れ替わりを行うグループであるため、この「モーニング娘。支持率」において含まれるメンバーも一定ではない。またこの支持率は単にメンバーごとの支持率を合計しただけの数値であって、グループ自体への評価は含まれていないことには注意が必要である。特にモーニング娘。はメンバーの入れ替わりを頻繁に行うグループであるため、やや読み取りには注意が必要である。なお本稿でのグループごとの支持率はすべてこの所属メンバーごとの支持率の合算した値を用いる。

2005年と2007年において大きく支持を減らしており、2004年段階では半分近くを占めていた支持率が半減し、22%にまで落ち込んでいる。モーニング娘。が絶対的な存在ではなくなり、数あるユニットの一つと見なされるようになっている状況を示している。 なお前述の通り、この支持率はメンバーごとの支持率を合算した数値であるため、卒業・脱退者が出ればその卒業メンバーの支持率はモーニング娘。の支持率からは省かれることになる。卒業・脱退者が出ることによってこの数値は大きく影響を受ける。2005年は矢口真里、石川梨華、2007年は藤本美貴、吉澤ひとみが各々脱退・卒業している。なお紺野あさ美、小川麻琴が卒業した2006年は他メンバーの支持が伸びた結果、全体としての支持率の低下は大きなものとはなっていない。

モーニング娘。は泥船か

前節のようにモーニング娘。の支持率は年々低下をしており、インターネットを中心に「モーニング娘。は泥船だ」的な言説が語られている。モーニング娘。という「ブランド」がもはやブランドとしての価値を持たず、逆にメンバーの人気に悪影響を及ぼしているという主張である。この説を検証するべく、モーニング娘。継続在籍メンバー支持率の推移を見てみよう。この数値は2004年12月段階でモーニング娘。に在籍しており、2007年12月段階でもモーニング娘。に在籍しているメンバー「高橋愛、新垣里沙、亀井絵里、道重さゆみ、田中れいな」の支持率を合計した数値である。従ってこのメンバーはモーニング娘。全体のメンバーの変化にかかわらず、4年間不変である。

2007年にはやや支持を減らしているとはいえ、2005,2006年の二年間は支持を増やしている。モーニング娘。のブランドが在籍メンバーの足を引っ張っているという見方はこのデータからは採択できない。前節で見たように、卒業・脱退したメンバー分の支持減が大きく影響しており、その減少分を新規加入メンバーを含め、在籍メンバーの人気上昇で補い切れていないと言うことである。ただ2007年の支持の減少についてはやや慎重な検討を要するところではある。2007年こそ、様々な「スキャンダル」報道でモーニング娘。のブランドイメージが最大限に傷つけられたと見られた年であり、本年の支持の低下との関連は十分に考えられるところである。

卒業・脱退によるモーニング娘。全体の影響を見てきたので、逆に卒業・脱退の持つ当該メンバー側の影響を見てみよう。

2004年12月段階でモーニング娘。に在籍したメンバーの内、その後も在籍し続けているメンバーの支持率を前述の通り「継続在籍メンバー支持率」、2005年以降に卒業したメンバーの支持率を「卒業メンバー支持率」、2004年12月段階でモーニング娘。を既に卒業していたメンバーを「OGメンバー支持率」として、その支持率の推移をグラフ化したものが下図である。

2004年12月段階では「卒業メンバー」の支持率が「継続在籍メンバー」の支持率を上回っているが、2006年には逆転している。さらに注目すべきは「OGメンバー」の支持率の低下が著しいことである。

デビュー後の経過年月、年齢などをみると「OGメンバー」>「卒業メンバー」>「継続在籍メンバー」となるため、「新鮮さ」、「若さ」を求められるアイドル業界においては当然の結果であるとも言えるが、「モーニング娘。からの卒業」は人気維持の上では少なからずマイナスの影響を及ぼしていることが伺える。

卒業のその後

前節で見たようにモーニング娘。卒業後の支持を維持するのは非常に困難であることが覗える。ただし、卒業発表から卒業年度においては「卒業効果」と呼ばれるものが存在するのも確かである。

「卒業効果」とはモーニング娘。から卒業することが大々的に報じられ、また卒業後の活動を開始することなどによってメディアへの露出が増え、支持も一時的に増すことを言う。こうした「卒業効果」をデータから見てみることにしよう。

データ数が少なく、また「卒業発表」→「卒業」→「卒業後の活動」という順当なステップを歩んでいるメンバー自体も少ないことから、やや見づらい結果となっているが、「卒業効果」というべきものは一定読み取れる。データからははっきりとは読み取れないが、飯田圭織の2004年(上グラフでは「発表年」)の支持もデビュー時期がほぼ等しく、2006,2007年段階ではほぼ同一水準にある中澤裕子、保田圭との比較において相対的に高めであると言える。

モーニング娘。に代わるもの

「卒業メンバー」が出ることがモーニング娘。全体の支持の低下を招き、逆にモーニング娘。から卒業することが卒業メンバーの支持を低下させている。これによりモーニング娘。関係メンバー(現役メンバー、卒業メンバー、OGメンバー)全体の支持は大きく下がっている。モーニング娘。というブランドが在籍メンバーの支持の足かせになっているという見方は採択できないが、モーニング娘。自体のブランドの低下は確実に起こっている。

モーニング娘。から卒業者が出ることによって、モーニング娘。全体の支持は低下するのだが、卒業メンバーが娘。在籍時点でもっていた自身への支持を維持できていないのである。これがモーニング娘。威信低下の内実である。

それでは卒業、OGメンバーへの支持はどこに流れたのであろうか。

ハロプロ内での新進のグループとしてBerryz工房と℃-uteというグループがある。2008年初頭段階でこの2グループ(あわせてベリキューと呼ぶ)とモーニング娘。を合わせてハロプロ内ではワンダフルハーツ組という名前が与えられている。このワンダフルハーツ全体の支持率の推移を見てみよう。なおワンダフルハーツにはモーニング娘。現役メンバーのみが所属しており、卒業メンバーはエルダークラブという別のグループに所属することになっている。

これを見るとモーニング娘。からの卒業者が出ることにより、モーニング娘。の支持が低下しても、ワンダフルハーツ全体としての支持には全く影響がないことが分かる。つまりモーニング娘。卒業による負の影響(グループとしての影響と卒業メンバー自身への影響)はすべてBerryz工房と℃-uteにより吸収されているのである。

やや余談になるが、このワンダフルハーツとエルダークラブの枠組みは例年正月に行われるハロープロジェクト合同コンサートにおいて用いられており、ワンダフルハーツのチケットの方が人気を博している。

このことはワンダフルハーツとエルダークラブ双方の合計支持率の比率にも現れている。

なお2007年12月期にエルダークラブの支持が増えているのは、組分けの変更により、多くのメンバーがワンダフルハーツからエルダークラブに移籍した結果である。人気がワンダフルハーツに偏りがちであった状況からして、この変更は両グループのコンサートを実施する上では好判断であったといえる。

新進グループであるBerryz工房と℃-uteが支持を伸ばしていることと併せて、モーニング娘。ブランドの威信の低下が叫ばれていることは前にも述べたとおりである。ただモーニング娘。ブランドが在籍メンバーの足を人気面で引っ張っているかどうかについてはその判断は留保しておいた。この点をさらに見るべく、Berryz工房と℃-uteの支持率と前に見たモーニング娘。継続在籍メンバーの支持率の推移を並べて見てみよう。

℃-uteに関してはその結成が2005年であり、2004年段階ではグループとしての実体はなかった。またメジャーデビューは2007年のことである。ただハロプロ自体には2003年にBerryz工房メンバーとともに所属している。

モーニング娘。継続在籍メンバーの支持は総体としては伸びている。またBerryz工房は2005年に大きく支持を伸ばしたものの、その後は伸び悩んでいる。一方正規デビューを果たした℃-uteの2007年の伸びは著しく、モーニング娘。継続在籍メンバーとの差を一気に縮めている。

このことから以下のことが伺える。

ただモーニング娘。継続在籍メンバーの支持が2007年に低下していることは確かであり、2006年まで保たれてきたブランド効果が2007年に大きく損なわれた可能性は十分にある。なお蛇足ながら2007年はモーニング娘。の「リーダー」であった藤本美貴が「恋愛」報道により脱退したほか、OGメンバーのいわゆる「スキャンダル」が数多く報じられた年である。これら一連の「スキャンダル」は本節で言うモーニング娘。継続在籍メンバーには直接は無関係であった。

モーニング娘。現役メンバー支持率の推移

モーニング娘。継続在籍メンバーの支持が2007年に低下したことを含めて、モーニング娘。現役メンバー個人別の支持率の推移を見ることにしよう。

久住小春は2005年に、光井愛佳・ジュンジュン・リンリンは2007年に各々加入しているため、それ以前の支持率は0である。

2007年に支持を下げているメンバーは高橋愛・亀井絵里・道重さゆみ・久住小春である。前三人は本項で言うモーニング娘。継続在籍メンバーである。一方支持を伸ばしているメンバーもおり、新垣里沙・田中れいなであり、この両名も継続在籍メンバーであり、この差し引きで前節の継続在籍メンバー全体の支持が低下しているという結果となっているわけである。

2007年の支持率に関しての明暗についてはまとまった仮説の提示は出来ない。特に2007年にモーニング娘。リーダーとなった高橋愛が支持を低下させていることについては全く不可解である。年齢的にアイドルとしての限界を超えたのか、2006年に好評を博したミュージカル「リボンの騎士」で主演し、大きく支持も伸ばした反動が出たのか。

一方高橋愛と同時にモーニング娘。に加入し、加入時より高橋愛に大きく人気面で水をあけていたとされる新垣里沙の支持率は着実に上昇を続けており、2007年にはついに逆転している(ただしあくまで本データでの支持率に限定したことであり、一般的な「人気」について述べたものではない)。

また2007年段階で久住小春の支持率がモーニング娘。現役メンバー中6位、2006年段階での在籍メンバー中最下位であることはこのデータの特性をよく示していると言える。テレビアニメなどによる子どもなどからの支持は当然ながら全く反映されない。また本データの対象となる投票者のごとき「熱心なモーニング娘。」ファンからの支持が久住小春に関して薄いことはファンの間では半ば常識となっている。本データはそうした傾向を追認したものとなっている。

支持の低下を招くもの

2007年のモーニング娘。現役メンバーの一部支持の低下の原因については不明であった。ここでは本データ全体からメンバー別に支持が低下した「原因」について考察を進めてみよう。

2004根から2007年にかけて支持率の減少率が高かったメンバーの支持率の推移を示した。

辻希美、紺野あさ美両名のデータにまず目を惹かれることであろう。2004年の両名の支持率は極めて高い。2004年においてアイドルとしてはほぼ頂点にあった松浦亜弥との比較において特にこの結果は目を見張る。また加護亜依と辻希美の2004年段階での「差」も目を惹くところである。

この点については本稿冒頭よりたびたび言及している本データの特性が顕著に表れた結果であると言える。とりわけ2004年時における辻希美・紺野あさ美のネット「界」(ブログ・掲示板など)における人気の高さはネットでのファンの間ではよく知られたことである。したがって一般層から見ると不可解な結果にも見えるが、事情を知るものから見るとそれほど驚くような結果ではないのである。

従ってこの両名の支持が年々下がっていることについては初動がある意味高すぎた結果であるとも言え、2005年の支持の低下についてはそれ以上の意味を見いだすのは難しい。実際実数ベースでは得票数は下がっておらず、単に投票数全体の増加により、支持率として低下しているに過ぎない。つまりこの両名のファンについてはこうした「投票」企画に対する感度が他メンバーファンに比べ高いということが覗える。

辻希美の場合

ただそうした中でも辻希美の2006年における支持の低下は注目すべきである。2005年から2006年にかけて投票数自体も半減しており、この一年で支持者が大きく離れたことが覗える。この点については辻希美の所属していたグループWのもう一人のメンバー加護亜依の支持率も合わせてみてみよう。2006年初頭に加護亜依がスキャンダルにより活動休止を行い、支持を大きく下げている。その影響を受けて辻希美もWとしての活動を行えず、ソロとしての活動が中心となった。しかしソロとしての活動は主としてバラエティ番組への出演や他メンバーを含んだコンサートの一メンバーとしての参加に限られ、歌手としての活動は大きく制約されることとなった。そうした結果が2006年の支持の低下に現れていると見ることが出来るだろう。なお2007年初頭には妊娠・結婚が報じられ、活動を休止させることにより、さらに支持は低下しているが、低下率はそれ以前の方が大きい。

紺野あさ美の場合

紺野あさ美に関しても2005年の減少は全体投票者数の増加に伴うものであるといえる。また2006年夏にモーニング娘。およびハロプロからの「卒業」しているが、それによる支持率の減少は比較的少ない。むしろそこから「復帰」をした2007年において大きく支持を減少させている。

「卒業」したあとの「復帰」はハロプロという枠組みにおいては前例がなく、また「卒業」の原因となった大学入試を無事に終え、大学合格をひっさげての「復帰」であったため、「不祥事」続きであったハロプロにおいては明るいニュースとして報じられた。その報道のイメージからするとこの結果は意外とも見えるが、ネットにおける熱心なファン層においてはこの「復帰」については大きく意見が分かれていた。その議論の内容についてはさておき、2006年まで紺野あさ美に投票していたものにおいてもその「復帰」に関しては意見の分かれるところであったことがこのデータから覗える。一般的にはスキャンダルでも何でもないこの復帰劇に対する熱心なファン層の受け止め方は興味深い事柄である。

後藤真希の場合

後藤真希は2007年秋に身内の不始末が報じられ、ほぼ同時にハロプロからの「卒業」を発表し、その後活動を休止させている。しかしそれによる支持率の影響は一切見られない。むしろそれ以前の支持の低下が著しい。ハロプロ卒業の理由としてハロプロ内での路線の違いなどが報じられたが、彼女のソロライブのスタイル、その評判がとりわけ2006年にファンの間で様々に論じられるなど、ファンの間でも彼女の「方向性」については議論の分かれるところであった。こうした路線・方向性への不満が彼女の支持の低下に繋がった可能性はある。いずれにせよ、彼女の場合2007年の「スキャンダル」の影響は現段階ではきわめて小さいことを改めて付記しておく。

藤本美貴の場合

藤本美貴も2007年にスキャンダルが報じられたメンバーである。恋愛が報じられ、その結果としてリーダーに就任したばかりであったモーニング娘。を緊急に脱退している。アイドルとしては恋愛関係のスキャンダルが一番打撃が大きいと見られることが多いが、藤本美貴においてはこのスキャンダルの影響は比較的少なく、それ以前の支持率の減少の方が大きい。2005,2006年の支持率低下の原因については仮説段階のものも提示することが出来ない。

加護亜依の場合

辻希美のところで述べたごとく、2006年初頭の「スキャンダル」とその後の活動休止により、支持を下げている。2007年には事務所を離れ、芸能界からは2008年初頭段階では遠ざかったままである。

矢口真里の場合

矢口真里に関しては藤本美貴の時と全く同じことが2005年に起こっている。ただしその影響は藤本美貴の場合よりも遙かに大きい。その後歌手としての活動を一時封印し、バラエティ中心の活動に移行した。2006年もさらに支持率は低下しているが、コンサートでの歌手活動を「再開」した2007年には減少率に一定歯止めがかかっている。

松浦亜弥の場合

松浦亜弥も2005年に恋愛関係のスキャンダルが報じられた。その年の支持率の低下は矢口真里とほぼ同水準である。活動自体はそれ以前とそれ以降とでは大きな変化は見られず、歌手活動を中心にCM、バラエティ番組などで幅広い活動を続けている。

2006年以降の支持率の低下は比較的少なくとどまっている。「脱アイドル」という方向性を巡ってファンの間では議論が分かれているが、彼女の支持層は2005年の段階で定まり、その後はほぼ彼女の方向性を追認しているものと思われる。

小括

ハロプロは「アイドル集団」を自認するだけあって、「恋愛」関連のスキャンダルにも人気面で当然一定の影響がある。ただこれまで見てきたように、恋愛スキャンダルがメンバー個人の人気低下の主要因とは言えない。むしろ辻希美の場合に顕著に見られるようにハロプロにおける活動の主流とされる「歌手」路線からの撤退が大きく影響しているように見える。藤本美貴はモーニング娘。脱退以降ほぼ歌手活動も封印されているが、バラエティ活動も行っておらず、路線の変更とは見られていない(活動を再開するときには歌手としての復帰がファンの間では望まれている)。矢口真里と松浦亜弥のスキャンダル発覚の翌年以降の支持率の推移もこうした傾向を傍証するものといえる。紺野あさ美においても歌手グループとしてのモーニング娘。は卒業したまま、フットサル活動を中心に行うことを理由ととして復帰したことが、支持率低下の一因とも言えるだろう(音楽ガッタスというグループで歌手活動も再開しているが、このグループは一時的なユニットとも見られており、活動の主軸をなすものとしては必ずしも見られていない)。

「黄金期」の限界

2001年夏、それまでリーダーであった中澤裕子卒業後の初シングル曲「ザ・ピース」リリース時のモーニング娘。のことを「黄金期」と呼ぶことがある。命名の由来はさておき、「国民的アイドルグループ」としてのメディア露出も非常に高く、中澤裕子と併せてこの時期に在籍していたメンバーの一般的知名度は非常に高いとされる。この「黄金期」メンバーは2002年の後藤真希の卒業から始まって、2005年の石川梨華まで卒業・脱退が相次いだ(その後最後の「黄金期」メンバー吉澤ひとみの卒業には少し間がある)。

この黄金期メンバーの支持が一気に低下したのが2006年である。

2005年から2006年にかけての支持率減少幅の上位10名中、この黄金期メンバーが8名を占めている。2006年は娘。卒業メンバーにとってはWメンバーである加護亜依と辻希美をのぞき、無風の年であったはずだが、大きく支持を失っているのである。まとまった原因は特に見あたらず、各々の理由があったものと推察されるが、結果としてのこの支持の減少がモーニング娘。OGメンバーの威信の低下を招いている。そしてその翌年、このメンバーの中からさらに4名がその活動において大きな制約を受ける状況にはいることになる(さらに黄金期メンバーではない藤本美貴も2007年に活動上の制約を受けることになるのも一つの因果か)。

ライバルたちの盛衰

以下はやや雑多ながら、ファン界隈で「ライバル」と目されるメンバー同士の支持率推移を見ていくことにしよう。

DEF.DIVAに藤本美貴(GAM)

安倍なつみ、後藤真希、石川梨華、松浦亜弥、藤本美貴の5名は現モーニング娘。よりも年長世代における人気メンバーとして扱われている。安倍なつみ、後藤真希、石川梨華、松浦亜弥の4名はDEF.DIVAというグループを結成してCDのリリースを行い、また松浦亜弥と藤本美貴はGAMというグループで同じくCDリリースなどの活動を続けている。

このデータにおける松浦亜弥の「弱さ」が再認できる。

また2004年段階ではトップの支持を得ていた後藤真希およびこのメンバーでは下位とはいえ高い水準の支持をもっていた藤本美貴の支持が低下をしている一方で、石川梨華、安倍なつみはその支持を保っている。

4期メンバーと「卒業」効果

モーニング娘。第4期加入メンバーはその雑多な個性などから、モーニング娘。のバラエティ性を一気に高めたと評されている。

Wメンバーとして、「辻ちゃん、加護ちゃん」としてまとめてみられることの多い辻希美と加護亜依の支持率の差が非常に大きい。推移全体については既に見たとおりである。

辻希美、加護亜依の支持の低下とは対照的に石川梨華は高い水準を維持し、さらに2006年の吉澤ひとみの支持率の伸びはめざましいものがある。

既に見たように「卒業」効果によるものとの解釈も可能である。この場合石川梨華がその後支持を下げているなど、そのほかのメンバーにおいても卒業後その支持の上昇を維持するのは難しい状況がある。来年が吉澤ひとみの真価が問われる一年といえるかもしれない。

おわりに

「はじめに」でも述べたように本稿で用いたデータはその特性上、一定の傾向をもったデータであるため、本データをもって「ハロプロメンバーの人気順」について積極的な知見を得るのは難しい。しかしデータの「推移」を中心に見ることにより、興味深い知見を得ることが出来た。特に「モーニング娘。」の近年の人気低下に関して、その原因やハロプロ全体に及ぼす効果について一定の知見が得られた。

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