序
2020年9月に発覚した元つばきファクトリー小片リサのいわゆる「裏アカ」事件、小片の「裏アカ」に書かれていた内容がネットに流出し、同僚のつばきファクトリーメンバーを誹謗していたことが判明、それにより活動休止から活動終了に至った事件、は二つの波紋を界隈に投げかけた。
- 小片が「裏アカ」を使ってメンバーを誹謗していたこと。「小片が仲間はずれになっていたことが原因か?」などつばきファクトリーというグループ全体に対する否定的な感情を惹起させる。
- 流出画像に書かれていた内容より、2019年浅倉樹々腰痛による長期活動休止は「仮病」だったのではないか、さらにそれを利用して担当マネージャーを
追放
図2したのではないかという疑いが生じる。
こうした「問題」を巡って、多くのハロプロファンはつばきファクトリー内部に問題があったと決めつけ、「研修生だけでグループを作ったのが失敗」などと言いたい放題であった。しかし実状は全く異なっている。あの騒動はつばきファクトリーだけの問題ではない。ハロープロジェクト全体に関わる二つの大きな出来事がその背後にあり、それらが交錯した事件であった。
- 「裏アカ」発覚
- ハロプロメンバー内でモーニング娘。メンバーを中心とした大規模な裏アカグループが存在していたことが内部的に露見、メンバー間に亀裂、グループ運営に支障
モーニング娘。からつばきファクトリー含む他グループに波及 - 浅倉長期活動休止からのマネージャー交代
-
つばきファクトリーのマネージャーが交代したことをきっかけとして、ハロープロジェクトグループマネジメントのあり方が刷新
「パワハラ・しばき上げ上等」の姿勢から「明るく、ポジティブな態度」への変更
つばきファクトリーから他グループに波及
「裏アカ」発覚事件は被害者の浅倉に留まらないハロープロジェクト全体に否定的な影響をもたらした事件であり、浅倉活動休止からのマネージャー交代はハロープロジェクト各グループに肯定的な影響をもたらした事件であった。しかし事件はつばきファクトリー内部に完結した事件として公的に処理され、その影響全体が語られることはなかった。そしてつばきファクトリーメンバー、とりわけ浅倉は「裏アカ」事件においては被害者の立場であったにもかかわらず、両事件において否定的な印象のみで語られた。つばきファクトリーというグループは「裏アカ」事件の記憶とともに深いスティグマを刻まれたのだ。
本稿はハロープロジェクトの正史では矮小化され、歪められたこの事件の全貌を限られた資料から明らかにすることを目指す。これはハロープロジェクトの歴史(モーニング娘。9期体制確立以降の「現代史」)を記録・記憶する上で欠くべからざる作業なのである。
本稿では、小片の裏アカFFグループがハロープロジェクト全体に広がりを持ったグループであったこと(2)、その裏アカで「暴露」された浅倉活動休止件がハロープロジェクトのマネジメントのあり方を大きく変える事件であったこと(3)を示す。そして小片裏アカが流出したあとの余波について、小片のその後の態度(4)およびそれに対する浅倉の反応(5)を追い、そこからアップフロントという事務所の持つ場当たり的な体質を明らかにする。こうした作業を通じて、つばきファクトリー初期メンバーがハロープロジェクトの歴史において果たした役割に改めて光を当てる(6)。
嫉妬の曙光
小片裏アカ事件はつばきファクトリー内の問題であって、そこに限定されると多くのハロプロファンは「他人」事(「推しグループとは無関係」「対岸の火事」)として考えている。しかしモーニング娘。ファンは以下の現象・疑問に向き合うべきだろう。
- 2021年なぜ1年中ハロコン「花鳥風月」「続・花鳥風月」をやり続けたのか(なぜ単独公演がツアーで出来なかったのか。)
- 2021年、モーニング娘。メンバーを中心に体調不良(それも心因性)で活動を休む、ないしは制限をするメンバー(佐藤優樹・小田さくら・岡村ほまれ)が続出した。
- なぜ2021年、モーニング娘。の活動だけが「凍結」させている、「時が止まったと思ってくれ」などとマネージャーから宣告されるような状況になったのか。
- 羽賀朱音はなぜ2021年10月16日 M-line Special 2021~Make a Wish!~にゲスト出演するまで小片と会わなかったのか (小片羽賀が久々に共演したMSMWのMC)。
- 譜久村聖と加賀楓には何らかの確執があった1) ように見えるが、何が原因か。
- 譜久村は2020年に卒業を所属事務所(アップフロントプロモーション)と話し合いながら、なぜその卒業が2023年冬にずれ込んだのか?
2020年後半から起こった様々な「出来事」のある部分は繋がっている話なのではないのか。その幾つかの現象についてハロプロファンは「コロナ禍」で納得したが、2021年のシャッフルハロコンはむしろコロナ感染をハロプロメンバー全体に拡散させかねない、など「コロナ禍」対策という説明はそれほど説得力を持たない2) 。それよりもハロプロメンバー内の一大裏アカグループの存在が暴露され、ハロプロ全体、特にその中心にあったモーニング娘。が混乱の中にあった、というほうが説明力が高いのだ。
「小片の裏アカ」としてハロプロファンに知られるものはこのモーニング娘。メンバーを中心とするハロプロメンバーにおける一大裏アカグループの断片であるというのが本章での主張である。以下、小片の裏アカについてその全体像を見ていくことにしよう。
- 小片裏アカグループとは35名図15からなるハロプロメンバーの裏アカウントグループである*
-
- モーニング娘。
-
- 10期で立ち上げ(中心メンバー石田亜佑美)*
- 後輩・他グループメンバーをオルグして拡大(佐藤、尾形春水、羽賀、森戸知沙希(CHAM MOSH)、加賀、横山玲奈)**
- 他グループ
-
- モーニング娘。10期メンバーと繋がりの強いメンバーが各グループからオルグされて参加していた*
- つばきファクトリー:小片・新沼希空・岸本ゆめの・小野瑞歩・小野田紗栞・秋山眞緒*
- 「裏アカウント」
-
- 非メンバーにはその存在は秘されていた3) *
- 非メンバーに対する否定的な言及がなされていた**
- ハロプロにおける「主流」派*
-
- 35名のハロメン「裏アカ」グループの存在がどれだけのインパクトを持つのか、「実験:ハロープロジェクト「裏アカ」グループ人数合わせ」で確認されたい
- このグループの存在を知らされさえしていなかったメンバーはこの大グループから「排除」されていたのである*
- *:仮説としての確からしさの強度(多い方が不確実、私の主観に基づく、以下同じ)
アップフロントは小片の流出画像について一貫して誰にも見られることのない日記のようにSNSを使っていた
ものがなぜかネットに流出したものだ、と説明してきたが、これは端的に嘘である。図15をみればフォロワーが34名いることが分かる。また流出画像の一定割合に「親しい友達」マークが付されている。これはInstagramでフォロワーの中からさらにその画像を公開する範囲を限定したときに付けられるマークである。小片の流出した画像は明らかに元々読者がおり、その読者を小片は意識的に選別して公開しているのである。
ではその読者(フォロワー)は誰か。アップフロントは誰にも見られることのない
と説明していて、誰がフォロワーだったのかについては沈黙する。そしてハロプロファンは勝手な想像をする。「地元の友達」ではないか、と。これは何の根拠もない想像であり、全く信頼するに足りない。
小片の裏アカの性質を知る上で、まずはそれを巡る疑問点を挙げておこう。
- アップフロントはなぜ
誰にも見られることのない日記のようにSNSを使っていた
などと見え据えた嘘をついたのか。 - 図1図2図6図8でメンバーのみならず、事務所スタッフの名前まで役職などの説明もなく唐突に出しているが、読者は誰が誰なのか把握できていたのか。
- 同僚メンバーの誹謗投稿をする際、「親しい友達」限定設定をしている投稿としていない投稿があるが、どのような基準で分けているのか。
小片の裏アカに書かれた文章は、多くのハロプロファンが魅せられたようにその多くの投稿において小片の心情、言いたいことが明確に伝わるものである。小片は相当の文章力を持っている。文章力とは読者に伝えたい内容を理解できるように記述するスキルである。小片は想定読者に対して「適切な」記述をしていたのだ。
この文章を「地元の友達」を読者に想定して記したとして、どの程度その「地元の友達」なる読者にこの内容が伝わるのか。34名もの「地元の友達」に日々逐一詳細な情報を知らせ続けていた、というのでもない限り(そしてそれをもし小片がしていたとするならばそれは許容できないレベルの「情報漏洩」である)、この裏アカの文章は理解できるはずがないのだ。ただの愚痴だから、という理解は無理がある。伝える気のない相手にこれだけの力の入った具体的な文章を書くとは通常考えられない。ただの愚痴ならもっと抽象的な表現でよかったのだ。情報漏洩になる内容を興味のない相手にひたすら具体的に書き連ねたのだとすると、小片は余りにも愚かすぎる。
それならば小片は誰を読者対象としてこの一連の文章を記したのか。この文章を適切に理解できる者である。ハロプロファンには多くの投稿を理解できた。しかし例えば図6せっかくCDを用意してくれるって言うんだから
について、具体的にどのような状況だったのか、ハロプロファンは正確に説明できるだろうか。内容はある程度抽象的には伝わるが、具体的に今日
何があったのかはよく分からないのではないか。図6の内容を正確に理解できるのは当日その場にいた者、つまり仕事関係者である(β)。それはスタッフか、ハロプロメンバーか。
小片一人がタレントで残り全員がスタッフである、というのはどう考えても無理がある。スタッフ34名は多すぎる。ハロプロメンバーを多数含んでいたことは否定しようもない。そして逆にそのような裏アカを共有するようなグループがあったとして、その中にスタッフを大勢入れるなどということがあるだろうか。ハロプロにおいてスタッフとメンバーがそこまで密着した関係を築いている、と考える事例は余り見掛けない。34名のFFのほとんど、ないし全員がハロプロメンバーないしOGであると見るのが妥当である。
つまり図6の時にその場にいた者とはつばきファクトリーのメンバーだったのだ。つばきファクトリーメンバーが図6の「愚痴」を読めば、小片が語っている内容を完全に理解できるだろうし、小片が言いたかったことも十分理解できたであろう。小片の裏アカにつばきファクトリーメンバーへの悪口が書かれていた時点で、多くのハロプロファンはそのFFにつばきメンバーがいるという可能性を排除しただろう。しかしつばきメンバーも小片のFFの中にいたのだ。「親しい友達」限定公開設定をすることで、FF相手の陰口をたたくことが可能なのである(γ)。そしてつばきメンバーに対する悪口を書いている投稿で「親しい友達」限定公開設定がされているのは岸本・小野を直接名指ししている投稿である図6図12。小片はFFである岸本・小野には気使って
いたのだ4) 。一方浅倉・谷本に対する悪口は全公開設定でなされている図1図2図5図8。
小片の裏アカがつばきファクトリーメンバーを含むハロプロメンバーをFFとするものであったとすると、アップフロントが誰にも見られることのない日記のようにSNSを使っていた
などと見え据えた嘘をついた理由も分かる。他のメンバーに影響が及ぶのを怖れたためである(α)。
「小片裏アカ」とは2020年8月段階で総数35名からなるハロープロジェクトメンバーのInstagramグループであった。そうなると必然つばきファクトリーメンバー(2020年段階で総数9名)が本グループの主たる構成メンバーだったわけではないし、このグループの中心も小片本人ではない。小片がハロプロメンバー内で仲がよかったのは羽賀・石田・工藤遥であり、尾形ともプライベートな交流があった。小片のハロプロ内人間関係の主軸はモーニング娘。にある。さらに小片裏アカ流出の直後に森戸の裏アカ画像も流出していること図16(2020年10月初旬)、を合わせれば、このグループの中心はモーニング娘。メンバーであったことが窺える。
このような裏アカウントグループに35名ものハロプロメンバーを糾合出来たのはモーニング娘。の年長メンバーであろう。そしてその中でもその様な派閥的グループを立ち上げ、運営する意思と能力のあったのは石田である5) 。石田がこの裏アカウントを主催し、モーニング娘。から他グループに渡るハロプルメンバー内の分断をもたらしたのだ。問題の出火点はつばきファクトリーではなく、モーニング娘。である。
おそらく元々はごく親しいメンバー同士で交流する目的のグループだったのだろう、しかしなんらかの思惑(野心)でメンバーを増やしていき、2020年段階で35名に膨れ上がった。このプライベートアカウントグループの中で、24時間で投稿が消える、という特性を「生かした」インスタストーリーでの「火遊び」が横行する。普段は公には言えない「愚痴」(事務所批判・同僚メンバーの悪口)などを投稿することがメンバーの中で行われた。小片はその流行に則って、あの投稿を行った6) のだ。
なぜモーニング娘。からこのような「事件」が起こったのか。おそらくモーニング娘。9期と10期との間の確執が原因であろう。9期と10期は加入時期の差はわずか(8ヶ月)であるにもかかわらず、10年以上にわたって「先輩後輩」関係にあった。これはモーニング娘。の歴史においても異例であって、1期2期3期、5期6期etc.、加入当初はともかくしばらく経つとほぼ同僚として和気藹々とした関係を築いてきた。ところが9期10期だけは厳然とした格差が維持された。それが10期メンバーの不満7) を増幅させ、その不満を陰口という形ででも晴らす場が必要となったのだ。それが小片裏アカグループと呼ばれるハロプロ一大プライベートアカウントグループの本質である。
譜久村と加賀との確執もこのプライベートアカウントグループの問題が遠因であろうと想像できる。加賀もまた石田・佐藤と関係が深いメンバーであった8) 。
「小片の裏アカ」が石田中心のグループだとすると、つばきファクトリーにおける当該グループのメンバーも確定できる。小片が裏アカにおいて「親しい友達」限定公開をしていた岸本と小野だけではない。小片裏アカが流出した当初のメンバーのブログにおいて、初めから小片に同情的なエントリをあげたメンバー(新沼・岸本・小野・小野田・秋山)と明らかに動揺を隠せないメンバー(山岸理子・谷本安美・浅倉)に分かれていた9) 。つばきファクトリー内部の論理(人間関係)で小片・新沼・岸本・小野・小野田・秋山vs山岸・谷本・浅倉という分かれ方はしない。モーニング娘。10期メンバー人脈の濃度からなら説明できる。前者は各々モーニング娘。10期メンバーとの繋がりが強いメンバーである。
- 小片…石田・羽賀
- 新沼…石田
- 岸本…石田
- 小野…佐藤
- 小野田…加賀
- 秋山…石田・佐々木莉佳子(アンジュルム)
上記メンバーが小片とFFである石田グループのメンバーだったのだ。
そしてこのグループは単なるプライベートアカウントではない。明らかに「裏アカ」と呼ばれるにふさわしいグループであった。もしこのグループの存在が、非メンバーにも普通に秘されることなく、知られていれば、それは「プライベートアカウントグループ」と呼び得たであろう。そうであれば、小片が浅倉に対する誹謗を長期にわたって垂れ流していたときに、つばきファクトリーメンバー全員にその問題が共有され得たし、問題がここまでこじれることもなかった。しかしそうではなかった。非グループメンバーにはその存在を秘して、メンバーだけでその秘密を守り、非グループメンバーへの否定的言及も許容する。それは構造的に非グループメンバーの排除であり、「いじめ」である。浅倉は本人が全く知らないところで、34名ものハロープロジェクトの同僚メンバーに対して自身の誹謗を垂れ流され続けていたのである。
小片の裏アカ発覚とはアップフロントにとってはハロープロジェクト内における一大裏アカグループの発覚に他ならない。当然当時のメンバーに対して周知するしかない(規模的にメンバーには隠蔽できない)。裏アカグループメンバーと非グループメンバーとの間に相当の感情的軋轢が生じたことは想像に難くない(b, c)。2021年にグループ単独ツアーを開催できなかったのはこれが原因であろう(a)。そして非グループメンバーのトップである譜久村にハロープロジェクト「一体」の回復を託すことになったのだろう(f)。しかし譜久村自身も傷ついていた。加賀との確執はその表出である(e)。
- アップフロントの取った解決策
-
- 「裏アカ」グループメンバーには厳重注意(
小片と話をする折に触れ厳重に注意・指導
)*10) - 外部・ファンに可視化される形での処分はしない*
- 「裏アカ」グループメンバーだけで馴れ合うことは当面自粛(d)**
- メンバー内の亀裂が強かったグループの単独ツアーを断念、シャッフルハロコン(「花鳥風月」)に切り替える*
- 「裏アカ」グループメンバーには厳重注意(
小片裏アカの「流出」を知ったアップフロントは慌てただろう。もちろん小片やその標的となったつばきファクトリーのこともある。しかしそれ以上に問題だったのは、その「裏アカ」のFFがハロプロメンバーの多数を含んでいたこと、そしてそのグループの中で、同僚メンバーへの誹謗が横行していたことだ。そんなことは到底公表できない。だからアップフロントは公式発表において、小片の裏アカは「誰にも見られることのない日記」などと白々しい嘘をついて、そのFFの存在を隠蔽した。裏アカメンバーを公式に処分することもできない。内部的に何らかの処分はあったかも知れないが、少なくとも今後の芸能活動を行う上では実質無傷である。つばきファクトリーメンバーのみがこの騒動の不名誉を背負わされることになった。
しかし裏アカグループの事実上の主催メンバーである石田の処遇はアップフロントとしても悩み所ではあったのだろう。本人が切望していたモーニング娘。リーダー、さらにはハロプロリーダーという道は事実上閉ざされた。そのことを石田は理解していた。それに対してアップフロントが用意した「代償」がHello! Project 2021 春「花鳥風月」におけるチーム風の実質リーダー、そして石田派(裏アカグループの中枢メンバー)中心のメンバー構成だったのではなかったか。
叛乱の代償
小片の裏アカ発覚事件において最も大きなインパクトを持ったのは同僚メンバーである浅倉への誹謗だった。2019年浅倉はヘルニアの悪化により5ヶ月間活動休止をしている。それについて腰痛くて休んでたんじゃない
図1ヘルニアという名の逃げ出し
図2と小片は裏アカにおいて浅倉を非難した。この言葉がファン界隈に広がり、浅倉は2019年に活動を休止していたのは「仮病」だったのだという疑惑が持ち上がった。「仮病である」というのは単に「我が儘だ」「自己中だ」といった評価とは全く違う、活動休止の理由に関する事実性に対する言及であり、浅倉のプロの芸能人・アイドルとしての名誉・評価に大きく関わる内容である。評価は所詮主観だが、事実性は客観性を持ったものとして被言及者を傷つける。その被害の回復には多大な労力が必要となる。
浅倉は確かに2017年6月よりヘルニアに苦しんでいたし、その姿は当時ライブ参加者には広く見られている。その後も腰に不安を抱え続けていたことは当時のつばきファクトリーを見ていたものなら皆が分かることである。しかしつばきファクトリーを当時的にまともにみていなかったハロプロファンの大勢は「仮病」をあり得べきこととした。小片が謝罪文で記した内容に関しましては私の勝手な思い込みで書いてしまっており、事実と異なる部分が多くあります
という抽象的かつ曖昧な物言いでは、その疑惑を晴らす効果はほぼ無かっただろう。
事実と異なる部分
とはどこか。小片が述べた腰痛くて休んでたんじゃない
図1、ヘルニアという名の逃げ出し
図2とは何だったのか。小片は嘘八百並べ立てたのか。そんなことがあるのだろうか。この言い回しはかえって浅倉に関する「疑惑」への興味を掻き立てさえするものであった。
小片の裏アカの記述には事実を記録した部分と、それに対する小片の評価が記され、混在しており、そこを切り分けて読む必要がある。そして腰痛くて休んでたんじゃない
逃げ出し
は浅倉活動休止を巡る小片の一方的な評価をさも事実性をめぐる言及のごとくにねじ曲げたワーディングなのである。
では小片が記した「事実」は何か。浅倉が活動休止中に言ったという戸川さん無理
図6という言葉には戸川に対して敬称が付けられている。一方岸本はキキちゃんが休んだの、あれは戸川が悪いた、そう呼び捨てかよ、ムカつく
図6と言ったと小片は記述する。敬称の有無というディテールを小片は忠実に再現しているのだ。これほどのディテールでの記述が嘘八百ではあり得ない。浅倉は活動休止した際に戸川さん無理
図6という言葉を確かに残したのだ。
小片の裏アカの記述とは独立して、2019年秋に戸川から大澤にマネージャーが交代している。そして浅倉の復帰はそのすぐ後である。これらをつなぎ合わせると浅倉活動休止とその後のマネージャーの交代には関連があったことは明らかである。
以下、浅倉ヘルニア発症から2019年活動再開までの経緯を追っていくことにする。
- 2019年浅倉樹々長期活動休止は担当マネージャー交代要求を伴った「叛乱」である*
-
- 背景
-
スマイレージ・Juice=Juice・こぶしファクトリー・つばきファクトリーの新グループ立ち上げ時におけるたたき上げ・パワハラ上等のマネジメント
- 2017年7月こぶしファクトリー藤井、卒業間際での活動終了
- 所属事務所との軋轢があった**
- 2017年7月こぶしファクトリー藤井、卒業間際での活動終了
- 浅倉ヘルニア発症からの経緯
-
- 大澤マネージャー
-
NGPトレーニー出身の小片を除くつばきメンバーが研修生であったときから世話をしていた
- 2017年6月16日 つばきファクトリー 浅倉樹々に関してのお知らせ腰椎椎間板ヘルニア発症 6月30日まで活動休止
- 2017年7月11日 つばきファクトリー 浅倉樹々に関してのお知らせトーク握手会限定で活動再開、ハロコン7月15日から7月29日まで欠席
- 2017年8月2日 つばきファクトリー 浅倉樹々バースデーイベント2017(9月4日 座ってのパフォーマンス)
- 2017年8月3日 つばきファクトリー 浅倉樹々に関してのお知らせ ハロコン8月6日から9月2日まで欠席
- 2017年8月29日 つばきファクトリー 浅倉樹々に関してのお知らせ 9月24日までのイベント、MC参加を除き欠席
- 2017年10月16日 つばきファクトリー 浅倉樹々に関してのお知らせ 10月19日、10月27日のイベント欠席
- 2017年11月23日 新曲イベント参加
- 大澤から戸川にマネージャー交代(2018年1月?)
- 戸川マネージャー
-
- 2018年2月22日 浅倉ワンマンLIVE ~First Blossom~一部参加
- 2018年4-5月 浅倉春ツアー京都1公演以外フル参加
- 2018年9-12月 浅倉秋ツアーフル参加
- 2019年2月19日 浅倉シングル発売記念イベント途中から欠席
- 2019年2月22日 浅倉2周年スペシャル フル参加
- 2019年初春?、戸川の指示で「話し合い」→メンバー内での糾弾会(山岸 2023: 86)
- 困惑した山岸研修生時代から関わりのある大澤前マネージャーに相談11)
- 2019年3月10日-4月13日 浅倉春ツアー静岡・東京・福島・山形公演参加
- 2019年4月13-14日 浅倉春ツアー富山・福井公演欠席
- 2019年4月28日-5月5日 浅倉春ツアー名古屋・岐阜・大阪参加
- 2019年5月8日 つばきファクトリー 浅倉樹々 活動休止のお知らせ浅倉ヘルニア再発→春ツアー以降不参加・舞台主役降板(6月6日-6月23日)
- 2019年6月25日つばきファクトリー 浅倉樹々についてのお知らせHello! Project 2019 SUMMER(7月13日-9月1日)全休
- 浅倉
戸川さん無理です
図2図6- 浅倉が戸川の交代を事務所に要求(自身の活動再開とのバーター)*
- 岸本大っぴらに戸川批判を展開図6
- 岸本、浅倉に呼応し、戸川交代要求運動*
- 最終的にメンバー全員が運動に加担か?***12)
- 2019年8月26日つばきファクトリー 浅倉樹々 活動休止のお知らせライブツアー2019秋(9月7日-11月30日)全休
- 2019年9月1日?(メンバーへの告知は8月23日か?13) )戸川、つばき担当を離れ、大澤がマネージャーに就任
- 大澤マネージャー
-
- 2019年9月3日 ハロモバメール浅倉
課題はたくさんあって頭を抱えることもある
- リハビリが思うように進まなかった、だけだったのだろうか?**
- 岸本、戸川への批判継続図614)
- 2019年10月9日 つばきファクトリー浅倉樹々 活動再開のお知らせ15) (【ハロ!ステ#310】つばきファクトリーからのお知らせ)
- つばきファクトリーへの
制裁
図216) - 大澤新マネージャーと小片を除くメンバーの関係は良好*
- 小片の疎外感(自分だけマネージャーとの関係が悪化)図6図7図10とその原因を作った浅倉・岸本への悪意図1図6図8
- マネージャー交代と自身の活動再開とをバーターに賭ける「闘争」(一人ストライキ)を
ヘルニアという名の逃げ出し
図2と誹謗
- マネージャー交代と自身の活動再開とをバーターに賭ける「闘争」(一人ストライキ)を
- 2019年9月3日 ハロモバメール浅倉
- 浅倉2019年活動休止の時期区分
-
第1期 5月8日告知 舞台降板 純然たる体調理由* 第2期 6月25日告知 夏ハロコン・バスツアー不参加 マネージャー交代要求?** 第3期 8月26日告知 秋ツアー全休 「制裁」?** - 結果
-
- 戸川マネージャーはつばき担当を離れ、初代マネージャーだった大澤がつばきマネージャーを引き継ぐ
- マネジメント方針の変更(
態度変えて、無理にLINEでも明るく振る舞って
)図6 - 浅倉は2019年秋ツアー全休
- 2019年10月より段階的に活動再開
- 小片の浅倉・岸本に対する悪意
アップフロントはスマイレージ以降の新規グループ立ち上げに際しては「パワハラ上等」のしばき上げマネジメントを行っていた。これがスマイレージ初期メンの多くが早い目に「脱落」した遠因ではないか。こぶしファクトリー・つばきファクトリーにもそのマネジメント方針は引き継がれ、こぶしファクトリーで立て続けに脱落者を出したにもかかわらず、その方針は改められなかった。しかしBEYOOOOONDS以降はその方針は改められているように見える。OCHA NORMAにかつてのハロプロ新グループ立ち上げ時に見られた追い詰められるような必死さ、暗さはない。この変化の始まりはつばきファクトリーにおけるマネージャー交代だったのではないか。小片は戸川の後を継いだ大澤に関して(前マネージャーだったときとは)態度変えて、無理にLINEでも明るく振る舞って
図6と述べている。大澤もまた前につばきファクトリーのマネージャーをしていたときとはメンバーへの接し方を変えたのだ。この時期にハロープロジェクト全体でマネジメント方針に変更がなされたとすると、BEYOOOOONDS初期、そしてOCHA NORMA立ち上げ時から前グループに横行していた「しばき上げ」とは違ったマネジメントがなされたことになる。
小片裏アカで問題になった浅倉長期活動休止からのマネージャー交代によって、アップフロントはハロープロジェクト各グループのマネジメント方針を変更することとなったのではないか。そしてつばきファクトリーのマネージャー交代はそのパワハラ的マネジメント方針を巡る浅倉はじめとするメンバーの「叛乱」だったのだろう。
事の起こりは浅倉のヘルニアに対する治療と活動とのバランスをどう取るか問題である。2017年にヘルニアを最初に発症した際、中途半端に復帰した結果、まさに「ずるずる」と症状を引きずることになった。再発した今回、どのように治療と活動を並立させていくべきか。
おそらく2019年5月下旬段階で症状は多少の改善が見られ、制限付きであっても活動再開は可能であると事務所は見込んでいたのではないか(8月に開催されたバスツアーへの参加が当初想定されていたとおぼしき形跡がある)。2017年の時のように早期の活動再開を事務所は考えていたのであろう。しかし浅倉は事務所の治療と活動を並立させるやり方に不安があったと思われる。症状の根本的な改善のためにマネジメント方針の転換が必要で、それを浅倉は事務所・戸川に突きつけた17) 。そこから感情的な行き違いが出来たのか18) 、もともと治療とグループとしての活動方針のあり方を巡って、戸川と浅倉の考え方に相容れない隔たりがあったのか。
戸川さん無理です
図6はこの辺りで発せられた言葉だったのだろう19) 。そうして浅倉は事務所の意向に反する形で舞台終了後7月以降の活動休止延長を決めた。小片が腰痛くて休んでたんじゃない
図2と評したのはおそらくこの時期以降のことである。
アップフロントという事務所は上意下達型組織であり、特にハロープロジェクトにおいてはメンバーは「子ども」扱いで、マネージャーが厳しくしつける、運動部における選手と監督(コーチ)の関係に擬えてよいだろう。一選手が監督の交代をフロントに要求し、それがかなえられることは一般的にあり得ない。ハロープロジェクトでもメンバーの要求でマネージャーが交代することは本来あってはならなかったはずだ。それではなぜ戸川マネージャーが退き、大澤がマネージャーを引き継ぐことになったのか。その経緯はおおよそ以下の通りであったと想像する。
戸川のマネジメント方針については他メンバーも否定的に思っており、リーダー山岸は研修生時代のマネージャーであった大澤に度々相談していた(山岸 2023: 86)。浅倉の「叛乱」がそれまでくすぶっていたメンバーの不満に火を付け、特に岸本は積極的に浅倉を擁護し、戸川を糾弾する。岸本の熱心な(異を唱えることを言えないお前の圧力
図6=高圧的な)説得により、小片を含む他メンバーも浅倉・岸本の「運動」に最終的には加担することになった。もはや特定のメンバーからの交代要求ではなくなり、全メンバーからマネージャーとしての立場を拒否された(総スカン)ことになる。ここに至りアップフロントも事態収拾に動かざるを得なくなった。おそらくアップフロントは戸川を「更迭」するという形を避け、山岸から相談を受けていた大澤が間に立つことで、戸川に身をひかせたのだろう。そしてそのまま大澤がつばきマネージャーに復帰することになる。この決定はおそらく8月下旬にメンバーに告知されている。
これで浅倉復帰条件は整ったはずだが、アップフロントはおそらく「喧嘩両成敗」だか、「直訴は御法度」だかの方針で浅倉の復帰を認めず、秋ツアー全休を発表する(制裁
図2)。戸川が辞めても浅倉が復帰できない状況に、岸本は本問題の非は戸川にあったことを主張するべく、戸川批判を継続したのだろう(いなくなってもなお、戸川さんの悪口ばっか言ってさ
図6)。
2019年7月から10月までの3ヶ月間、つばきファクトリー内部ではメンバー・マネージャー・事務所との間でタイトな交渉が続いており、グループの存続に関わる話も出たのかもしれない。アップフロントはグループ内部に問題があるとグループの活動を「凍結」させる(cf. 2020年モーニング娘。)。小野が後にこの時期における「不安」を語り、またファンサイドでもつばきの「停滞」感が取り沙汰されたが、それは「エース浅倉が復帰しない」から活動が盛り上がらない、などという生やさしいものではなかったのだ。
アップフロントも浅倉を辞めさせるところまでは考えておらず、またメンバー・大澤らの意向・努力もあって、浅倉復帰へ向けての調整が続き20) 、最終的には10月1日を持っての復帰となる。それでもアップフロントは是非なき怪我による活動休止とは見なさず、活動再開時に浅倉の謝罪動画を上げさせる21) 。小片のヘルニアという名の逃げ出し
図2というワーディングは明らかに悪意ある方向にねじ曲げられているが、しかしアップフロントの認識とそれほど大きくズレたものではなかったことになる。アップフロントがマネジメントの失敗を認めず、メンバーにその責を押しつけ、玉虫色の解決をしたことが後の火種となったのだ。
大澤マネージャーのもと、浅倉も復帰し、つばきファクトリーも心機一転前に進むことになる。大澤マネージャーは実質的に山岸他メンバーが招聘した、メンバー意中の人であり、メンバーとの信頼関係が十分に出来ていた。大澤に関するメンバーの語りは「叱られた」ネタでも楽しげである。研修生時代に培った信頼関係あったればこそである。
問題は小片は研修生とは違うルートでつばきファクトリーメンバーになっていたこと、つまり他メンバーと異なり、大澤との信頼関係がもともと薄かったことである。大澤は全メンバーに対してそれなりに厳しく接したのであろう。しかし研修生出身メンバーは大澤の厳しいマネジメントも愛情あるものとしてポジティブに受け止められたのだろうが、小片はそう受け止められなかった。全員が不満を持っていた戸川時代と異なり、自分だけが不満を募らせる状況に小片は耐えられなかったのだろう。「自分だけが」という被害感情、疎外感から小片は大澤への悪意を膨らませ、さらには大澤と上手くやっている他メンバー、とりわけ大澤を招聘するきっかけとなったマネージャー交代運動を始めた浅倉、そしてその運動に自分を巻き込んだ岸本への歪んだ悪意が増大していった。これが小片が裏アカで浅倉・岸本を攻撃した理由である。
しかし小片の浅倉・岸本への言及は等価ではない。浅倉に対しては一方的な陰口だが、岸本に対しては直接非難している22) 、いわば喧嘩の一断片である。小片は大澤・浅倉への恨みを岸本もメンバーである「裏アカ」グループで岸本に対してぶちまけた。おそらく岸本は反論したのだろう、しかし小片は納得せず、どんどん不満を膨らませ、ワーディングが過激化していったのだと思われる。岸本は小片が自分に怒りをぶつけていたことを知っており、反論の場も存在していたが、浅倉は自分の知らないところで一方的に悪口を垂れ流されたのだ。小片がストレスをぶちまけていた場所が浅倉を排除した「裏アカ」グループであった、ということが事態を悪化させたのである。
軋轢の余炎
事件発覚後、小片は活動を休止、その後つばきファクトリー、ハロープロジェクトの活動を終了する。その各々において「謝罪」文を出しているが、失言をした政治家の謝罪文と同レベルであり、「問題」に対して誠実に向き合っているとはいえない。何が問題かに焦点を当てることなく、ご迷惑をおかけし
たことを謝っているだけである。小片は浅倉の名誉を傷つけたが、その名誉回復に小片は何の貢献もしていない。
- 裏アカ発覚後の小片の言動
-
- 2020年10月8日つばきファクトリー 小片リサの活動休止に関するお知らせ
- 2020年12月28日つばきファクトリー 小片リサの今後に関するお知らせ
- 2021年9月3日みなさまへのお願い 小片リサ
- 2021年9月4日よろしくお願いします 小片リサ
- 小片、個人Instagramで浅倉のフォローを外し、浅倉樹々誕生日おめでとう更新を削除(時期詳細不明)
- フォロー外しの件がファン界隈で話題にされると、フォローを戻す(2022年10月)
- つばき時代の投稿を全部削除(2023年4月)
小片は浅倉を名指すことのない抽象的な「謝罪文」を上げたのみで、その後自身の公式Instagramで浅倉へのフォローを外し、また浅倉の誕生日を祝った更新を削除している。要するに小片は浅倉に対して申し訳ないことをしたとは思っていないのだ。逆に浅倉に対して自分が被害者だと思い続けている節がある。
腰が痛くて休んでたんじゃない
図1ヘルニアという名の逃げ出し
図2とまで周囲に噴いてまわり、それが流出することにより広く浅倉の名誉を毀損しておきながら、それに対してなぜ真摯に向き合わないのか。小片はチャイルディッシュで被害感情の強い人間なのではないか、という小片の人格・性格にその原因を求めたくなる誘惑は断ち切れないが、それだけが理由ではない。
問題はつばきファクトリーマネージャー交代運動に対する認識である。これに対する小片と浅倉の認識には決定的なズレがあった。
迷惑かけてんのに平気な顔して戻ってくるのマジでムカつくし図6
私たち8人は君がいない間もいろいろ頑張ってたけど、頑張ってたとか関係ないならないってはっきり言って欲しいです図8
…(浅倉は)戻ってきてすみませんでしたの気持ちもなく図8
小片は浅倉の活動休止によって自分(たち)は迷惑
を掛けられた側であると認識していた。浅倉が活動休止することによって、小片は浅倉に決まっていた舞台主役の座を得、その後のライブでもメインパートを多く獲得している。そのことについてかように恨みがましく振り返るだろうか。むしろ浅倉活動休止でもっとも「得」をしたのは小片である。おそらく小片の恨みはそこが主ではあるまい。浅倉活動休止のよって小片が被った被害迷惑
いろいろ頑張ってた
とは、浅倉が要求したマネージャー交代運動にあるのだ。この浅倉のマネージャー交代運動におそらく小片も加担しているのだが、小片はそれは岸本の高圧的な物言いに引きずり込まれただけであって、自らの意志と責任でもって協力したとは思っていなかった23) のだろう。つまり小片にとってその運動そのものが本音では迷惑
だったのだ。小片のこうした発言は現代日本の「権力」に逆らうこと、例えばデモやストライキを悪しきことと見なし、そうした行為を迷惑
と断罪し、小馬鹿にすることを是とする風潮をそのまま反復したものである。
浅倉は自身の始めたマネージャー交代運動は、つばきファクトリー全体(あるいはハロープロジェクト全体)の利害を代表するものと認識していたであろう。戸川のマネジメント方針は間違っており、またそれを改めさせない事務所も間違っている。そういった浅倉にとっての「正義」があればこそ、一人ストライキとでもいうべきラディカルな行動に出られたのだ。そしてそうである限り、それに加わる他メンバーは「私のために」援助してくれている人たちではなく、「私とともに」闘う人たち、であっただろう。つまり浅倉にとって8人は共闘者に他ならず、「戻ってきてすみません」と謝罪するのではなく、「色々ありがとう」と感謝し、その成果をともに言祝ぐ相手だったはずだ。
小片は、浅倉の我が儘から始めた迷惑な騒動に自分は巻き込まれた、と認識しており、浅倉は全体の正義のための運動にメンバーが協力してくれた、と認識していた。この認識の隔たりは大きい。
補遺 女優の癇癪
小片はファーストオリジナルアルバムmontage(2024)収録の1曲Actressにおいて作詞(角田崇徳との共作)している。この詩について小片は以下のように説明している。
誰かの心の中に存在する小片リサというイメージを否定しないように、私らしさを演じて生きてきました。その私らしさはいつしか誰かのイメージの中だけのものになり、私自身が本当の私を見失い、誰かの正解に合わせるようになりました。そうじゃないという声をあげる勇気が足りなくて、ずっと避けてきました
この詩の中に小片の赤裸々な心境が表出されているはずだが、それはいつの小片の心境なのか?一般的には「今の」小片の心境を語っている、と理解するのが普通だろう。
この詩においては本当の私
と綺麗なままの私
が対比され、綺麗なままの私
をニセモノ
と否定する。しかし小片はその本当
の自分をずっと隠してこられた人物ではない。逆にその本当
の自分を流出によって表出させられ、それによって他メンバーを傷つけてしまった人だ。そのような経緯を持ちながら、綺麗なまま
の自分を今(2024年)まで演じてきた、などと振り返ってみせるのは意味が分からない。今現在の小片の中に綺麗なままの私
だけが見られていると小片が認識しているというのは全く理解しがたいところであり、その上で本当の私
を認めてほしいとは、今更何を言っているのか。裏アカであなたの本当の私
とやらを散々見せつけてきたではないか。あなたが綺麗なままでいればあなたは人を傷つけずに済んだ。あなたが本当
の自分を裏アカで吐き出したために人を傷つけた。なのに子どものような本当
の自分にすがり続けるのか。
しかしこの詩が2020年時の小片の心境を思い起こしてしたためたものだ、と理解すると、この詩も多少なりとも合理的な解釈が可能となる。
綺麗なままの私
とは今の小片ではなく、2020年裏アカが発覚する前のオフィシャルな小片(血液型がA型の真面目で、世界一頼れるサブリーダー
)であり、本当の私
が他人に嫉妬し、誹り、そしてその倦んだ心情を裏アカに書き連ねていた小片である。そうして「私」は誰か(メンバー)を傷つけ
た。その私はしかしそうせざるを得ないほどちぎれそうな心
でもがいていた。私は自分を愛せな
かった。だからこそ君にだけは
その私を認めてほしくて、私は裏アカに書き連ねていたのだ。
この君
とは岸本ゆめのである。裏アカでは小片はひたすら岸本に絡み続けていた、その断片があの裏アカのメンバーへの悪口である。
人はどうして 誰かを傷つけるの
君にだけは認めてほしかった 今の私が間違いじゃないこと 心がちぎれるもっと前に
- 人=「私」=小片リサ
- 誰か=浅倉樹々ほか
- 君=岸本ゆめの
2020年の小片は綺麗なままの私
に疲れ、メンバーを妬み、マネージャーに憎しみを募らせ、苛立ち続ける本当の私
の気持ちを誰か(岸本)に理解して貰いたかったのだ(キキちゃんは大澤さん派だから優しくするの?
図6)。そうして岸本に相手にして貰いたい一心で、岸本が庇う浅倉への誹謗が激化していった。
2020年当時の小片の心境がそのようなものであった、ということは理解できる。しかし問題は2024年、その当時の心境を綴るに当たって、その当時の自分をどう総括するか、である。
この詩は誰か
を傷つけた経験について確かに触れている。しかしその自らが傷つけた誰か
への思いはほぼ表出されていない(傷つけた相手への具体的な思いがあれば、その相手を誰か
とは呼ばない。仲間
などと呼ぶ)。傷つけた側の己を認めてほしかったと訴えるのみである。結局この詩には自分が傷つけた誰か
=自分ではない他者が明確な像を結んでいない。ひたすら「私」の心情のみが思考の対象とされ続けている。こうした他者の欠如は、小片の「事後」の行動、精神性において大いに問題として存在し続けている。
結局2024年に書かれたこの詩の中では、2020年の事件について、自身が受けた処分並びにそれに伴う評価について理不尽な仕打ちを受けたという被害感情が支配しており、己の加害行為に対する真摯な反省はほとんど表出されていないのである。
漆黒の埋火
小片に対するアップフロントの処分が甘い、というより実質無処分、理由は明白であろう。
- 裏アカウントで他メンバーを誹謗していたのは小片一人ではなかった
本件で「小片だけが悪いわけではない」のは確かだが、悪いのは誹謗されたつばきファクトリーメンバーではない。小片のFF、モーニング娘。10期メンバーなどを含むハロプロメンバーの半数近くのメンバー、とりわけその中で、他メンバーを誹謗する「火遊び」に加わったメンバーが悪いのだ。しかしそのメンバー全員に厳しい罰を与えるわけには行かない(そんなことをしたらハロプロは「崩壊」する)。だから小片のことも、他メンバーと同様に守るしかなかったのだ。つまり小片に一方的に誹謗されたつばきファクトリーメンバーの名誉回復にアップフロントが一切配慮しなかったのは、あの「裏アカ」グループの中心であったモーニング娘。メンバーを守るためであった。モーニング娘。という「大グループ」を守るためにつばきファクトリーという弱小グループ、とりわけその当時の構成メンバーが犠牲になったのだ。
そしてアップフロントは裏アカ事件などなかったかのごとくに、元々の予定を微修正して遂行する。小片は「予定通り」ソロ活動へ、つばきファクトリーは新メンバーを入れて再プッシュ(ただし既存メンバーは放置)。アップフロントはこれでバランスが取れていると思ったのではないか。アップフロントにおいて大事なのはグループであって、グループ間でのバランスが取れれば問題なしと判断したのだろう。グループ内のメンバー、今回の件で言えば、小片に直接傷つけられたメンバー本人の被害回復など眼中になかったのだ。
しかし浅倉は事務所の処置に納得していなかったし、大澤・山岸もそうであった。浅倉はおそらくその「サイン」を事務所に送っていた。しかしアップフロントはそれを軽視した。そうした状況において2021年4月26日に浅倉セカンド写真集発売記念イベントが開催されるが、その場で浅倉に対して小片裏アカの内容(おそらく「仮病」)を直接問いかける客が出る、という事案が発生する。
そしてこの件が引き金となって2021年9月3日に「事件」が起こる。11ヶ月前の事件を「蒸し返す」告知を事務所が行い、つばきファクトリーブログに浅倉・小片、そしてリーダー山岸のそれに関するエントリが上げられたのだ。
- 2021年9月3日の小片裏アカ「蒸し返し」は浅倉の事務所へのプロテストの結果である*
-
- 背景
-
- 小片の「処分」は最小
- つばきファクトリー「活動終了」は本人の意志**
- 「裏アカ」グループの他メンバー(不処分)との衡量から***、むしろ積極的にソロとして売り出す
- 元々卒業予定(2021年秋)があって***、その予定を少し早めて粛々と遂行しているだけではないのか
- 元気に頑張ります! 小片リサ(2020年3月5日 コロナ禍ライブ中止の知らせの中にこのポジティブさ)
- 2020年9月30日オンラインで開催された「シリアス劇」は大団円的内容であった
- 2020年11月開催予定だったバースデーイベントについて
最後のバースデー
図14 - 2021年つばきファクトリー新メンバー加入は小片「卒業」を見越してのものではなかったか***
- 浅倉の状況
- CS番組「ハロプロTOKYO散歩」(2021年1月25日放送)
メンバーの本音っていうのが見えづらくて、私のことをどう思っているのか聞きたい
時折泣きそうな表情 - セカンド写真集(2021年2月?撮影)表情硬く、唐突に?涙を流す場面も
- CS番組「ハロプロ!TOKYO散歩~メジャーデビュー4周年記念!生放送スペシャル~」(2021年4月22日放送)
誰にでも(苦手な人でも)同じテンションで接する
全体的に不機嫌な表情 - ハロコン「花鳥風月」(2021年3月14日~5月30日)表情が堅い場面あり
- セカンド写真集発売記念イベント(2021年4月26日)で小片裏アカの内容を元にした誹謗中傷を受ける
- CS番組「ハロプロTOKYO散歩」(2021年1月25日放送)
- 小片の「処分」は最小
- 2021年9月3日
- その後
-
- 浅倉精神状態の改善**
- 『時間がぁ』森戸知沙希(2021年11月29日)24)
目が合うとニコッってしてくれるのも嬉しかったし、暇な時にたくさん話せた気がして嬉しかった!
- 『時間がぁ』森戸知沙希(2021年11月29日)24)
- 羽賀、MSMWにゲスト出演、プライベートを含めて小片と久々の再開(2021年10月16日)
- 小片リサ、1stカバーアルバムリリースイベントにつばきファクトリーがゲスト登場(2021年12月15日)
- つばきファクトリー 浅倉樹々の卒業に関するお知らせ(2022年9月7日)
- 愛犬チャーリーを亡くす(2022年3月13日)
- 動物専門学校進学を考え始める
- 小片、事務所をアップフロントプロモーションから系列事務所ジェイピルームへ移籍(2023年1月1日)
- 浅倉、つばきファクトリー・ハロープロジェクトを卒業(2023年4月2日)
- 浅倉、事務所をアップフロントプロモーションから系列事務所ジェイピルームへ移籍(2023年4月3日)
- 浅倉精神状態の改善**
公式には、なぜか浅倉誕生日・小片ソロアルバム発売告知開始日に唐突に事務所が主導で「つばきファクトリーファンの皆様へお願い」と題する告知文を上げ、関係メンバー(山岸・浅倉・小片)に各々それに関するエントリを上げさせる、という体裁を取っている。しかしこれは事務所主導ではあり得ない。おかげで小片アルバム発売告知が台無しになってしまった。そんなことを事務所主導でやるわけがない。そもそも嫌がらせのあった4月26日から9月3日までの間、アップフロントは何をやっていたのか。
事件の経緯はおそらく以下の通りである。
- 2021年4月26日写真集『海の見える街』発売記念 浅倉樹々個別お話し会にて小片裏アカの内容を元にした誹謗中傷を受ける。
- 浅倉が大澤に皆さんへの文章を送る。
- 大澤は事務所上層部に上記内容を転送し、対応を求める。
- 5月~8月の間動きなし。
- 事務所の対応が不誠実であったため、大澤は山岸とも相談して、山岸・浅倉のブログエントリに小片裏アカ事件の「被害」を告発する内容を掲載することを決め、事務所に告知する。
- 告知を受けた事務所は(多分差し止め要求を出したが、蹴られ)、事務所主導で上記ブログが書かれた体裁とすることを大澤に提案、大澤これを受諾。
- 事務所は小片にアルバム告知を予定していたであろうブログエントリを撤回させ、裏アカ事件に対する反省文を書くことを指示。
- つばきファクトリーファンの皆様へお願いなる事務所告知文と山岸・浅倉・小片のブログが同時にアップされる。
一連の文書の中で浅倉が書いた皆さんへの日付は2021年9月3日だが、内容的にこれは問題のイベント直後に書かれたものであろう。この文章をおそらくマネージャー(大澤)は直ちにブログにアップすることを回避し、事務所上層部に送りつけた。しかしアップフロントはおざなりな対応に終始し、浅倉の事務所に対する不信が募った。
アップフロントは小片ソロデビューに浮かれ、2021年9月3日を小片ソロアルバム発売告知日と定める。9月3日は浅倉の誕生日であり、バースデーイベント当日でもあった。その日に係争中(事務所にとっては「終わった」扱いだっただろうが、浅倉にとっては終わってはいなかった)の小片のアルバム発売告知開始する、それは浅倉にとっては嫌がらせに近いものと映じたのではないか。
なぜ浅倉誕生日当日にあのような「不愉快な」内容のブログを浅倉に書かせたのか、アップフロント酷い、とハロプロファンはアップフロントを非難したが、これは全く的外れである。9月3日は浅倉の誕生日である以上に、小片のアルバム発売告知開始日であり、それを事務所自らが台無しにした、というのがあの事件の本質である。事務所と小片が小片裏アカ事件の責任に向き合わず、浅倉の被害を軽視し続けたその報いがあの事件である。
浅倉は2021年春期は明らかに不機嫌であった。しかし本事件を経た秋期は精神状態に大きな改善が見られた。おそらく9月3日事件のあと、事務所はようやく浅倉の被害に向き合い、内部的に相応の対応をしたのだろう。その具体的な内容については知る余地もないが、2019年浅倉の長期活動休止に対する事務所の見解の変更と翌年の浅倉卒業発表に通じる提案(卒業後の処遇など)が事務所から浅倉になされたのではないか。
浅倉と事務所(小片)の「和解」(小片には心情的には不承知なものが残ったようだが)を持って、これまでおざなりな対応に止まっていたハロプロメンバーを二分した裏アカ事件への対応も前進したのだろう。アップフロントは積極的に事件の終息を図り、これまで距離を置くことを余儀なくされていた裏アカFFメンバー間での公然とした交流再開も実現する。それでも非裏アカグループメンバーと裏アカグループメンバーの間の「壁」が完全になくなったわけではなかったであろうことは譜久村・加賀のあからさまな確執によって観察できる。傷跡は生々しく残るが、アップフロントはこれにて手打ちとした。
2023年ひなフェス浅倉樹々卒業公演はまさしくハロプロ内の「手打ち」完了の大々的なセレモニーであった。裏アカグループメンバー・非メンバー合わせ、ハロプロメンバーが一丸となって、最大の被害者浅倉の卒業を見守り、見送る。つばきファクトリー単独卒業公演ではこのセレモニーにはならなかった。
小片は当日ひなフェスと同時開催されていた里山イベント出演のため、この卒業セレモニー開催会場内にいたが、このセレモニーを直接見守ることはしなかった。
結
浅倉は2019年から2021年にかけて、二度所属事務所に対して反抗したことになる。一度目は痛み分け(マネージャー交代要求は成就したが、浅倉自身も制裁
図2を受けた)、二度目は浅倉の言い分がほぼ通ったものと思われる。そのようなタイトな態度で事務所とやり合ったわりには本件以降の浅倉は、卒業後も事務所に残り、にこやかでどこまでも楽しそうだ。
裏アカグループにいたメンバーとの関係も微妙なものになってもおかしくはない。実際つばきファクトリー内部での人間関係にはそれなりに変化があった。それ以前は距離があった山岸・谷本との関係が良化した。新沼・岸本・小野・小野田・秋山との関係は、途中は複雑なものがあったとも思うが、最終的には壁はなくなった。
いささかハードなこの一連の経験を、今浅倉がどう総括しているのかはさっぱり分からない。そもそも浅倉の中に「反抗した」という認識があったのかどうかも分からない。
アップフロントは問題に対して場当たり的な対応に終始し、正面から向き合うことから逃げ続けた。誰も責任を取らず、誰にも責任を取らせず、ひたすら事態をうやむやにするための努力を惜しまなかった。そうした中でも、ハロープロジェクトは確かに前進を続けられている。
つばきファクトリーマネージャー交代事件を経て、アップフロントは各グループのマネジメント方針を変更することにより、BEYOOOOONDS以降の新規グループの立ち上げがスムーズに運ぶようになったはずだ。もちろん所属メンバーにとってこの改善は歓迎すべきものであろう。
ハロープロジェクト全体に存在していたモーニング娘。メンバーを中心とする「裏アカ」グループの存在は、つばきファクトリーメンバーの被った不名誉と引き換えに、ハロープロジェクトの正史から消し去られた。「裏アカ」グループの中心メンバーは次々とグループを「晴れやかに」卒業し、世代交代を果たしてハロープロジェクトはあらたな歴史を刻むことになる。
つばきファクトリー、浅倉樹々はハロープロジェクトマネジメントサイドに蔓延していたパワハラ気質を変えさせる嚆矢となり、またモーニング娘。発の「裏アカ」騒動による不名誉を一手に引き受けたのだ。