ライティング実習2B 02組

2024年度 後期 火03 13:30-15:00 瀬田3-B105

「はじめに」(p.148,182,245)

「はじめに」にはいわゆる要旨Abstract(p.245)を書く。冒頭に研究目的を明示し、そのあと各章の概要をまとめる。

例題

下記研究概要をもとに「はじめに」(要旨Abstract)を書いてみよう。さらにそれを踏まえて論文タイトルを付けてみよう。

問題提起
  • 子供は女性だけで産み育てるものではない
  • →子育てにおいて男性がどのような役割を現在果たしており、将来果たしうるかを提示することには意義がある
問題の意義と背景
少子化の原因は女性のライフスタイルの変化だといわれる。この議論では通常男性の役割は無視されている。
研究方法
  • 新聞や雑誌に描かれる男性の子育てのイメージについて調べてみた。
  • 新聞や雑誌などのメディアが、男性の子育てをどのように描いているかを調べる

論文アウトライン

Point(論点)/Assertion(主張)…序章「はじめに」
何を明らかにしたいのかを明確にする。その際、研究方法・データから導きうる内容であることを確認する。

※「少子化を食い止める新たな道筋」自体は新聞・雑誌に表象される男性の子育てイメージ研究からは直接には導けない。「男性の子育てイメージ」がどうであるか、が論点となる。

Reason(理由)…第一章
これまでの議論の流れ(既存の文脈)を整理し、その中に自身の研究を位置付けることにより、なぜその研究を行うのか、その理由を示す。
Evidence(論証)…第二章
研究対象・研究方法とそれにより明らかになる研究結果を提示する。
Point(論点)/Assertion(主張)…第三章
何が明らかになったのかをまとめ、その研究結果の持つ意義を提示する。

テンプレート

本論文は[何を明らかにして]…[どうする]…を目的とする。まずは…[従来議論の流れと限界]…(第一章)。次に…[具体的にどのような手法・データを用いて何を明らかにするのか]…(第二章)。最後に…[最終的にどのような知見が得られるのか]…(第三章)。

この論文では規定文(主張)は「明らかにする内容」である。

解答例

男性子育てに対する役割期待の狭さ-新聞・雑誌を用いた言説研究を通じて-
0 はじめに

本論文は、現代日本における男性の子育てに対する役割期待がある時期より大きく変化していることを明らかにし、その知見から少子化を食い止める手がかりを得ることを目的とする。まずは子育てを女性の役割に限定づけて、女性のライフスタイル論で子育てを論じてきたこれまでの議論を振り返り、その限界を提示する(第一章)。次に近年の主要新聞・総合週刊誌・漫画雑誌(コミック)の中から男性の子育てに関する記述を集め、男性の子育てのイメージがどのように変容してきたかを明らかにする(第二章)。最後にこの研究から得られた現代日本における男性の子育てイメージの結果を踏まえて、少子化対策にどのような知見がもたらされるかを検討する(第三章)。

課題:スマートフォンの普及がもたらす大学生の学力の影響

下記論文のアウトラインをもとに「はじめに」(要旨Abstract)を書け。さらにそれを踏まえて論文タイトルを付けよ。

スマートフォンの普及がもたらす大学生の学力の影響

1 問題意識の所在

本論文の主張はスマートフォンの長時間使用は学力達成にネガティブな影響を及ぼすわけではないということである。

大学生のスマートフォン依存問題に関してはこれまでも多数の言及がなされている。たとえば2023年5月28日には産売新聞が3面にわたる特集記事を掲載し、大学生のスマートフォンの使用の弊害を訴えた。それを皮切りに新聞や週刊誌でこの問題が多数取り上げられるようになっている1)。こうした議論を受けて、学術的にも様々な議論がなされてきた。情報倫理学会では(省略)。また社会学においても(省略)。こうした議論の多くはスマートフォン使用のマイナス面を強調し、大学内でのスマートフォン使用の制限を求める世論を形成してきた。しかしその際、特定の事例を取り上げ、問題の大きさが主張されることが多く、平均的な学生のスマートフォン使用の実態が反映されていたとは言いがたい。そこで本論文ではよりマクロな視点から大学生のスマートフォン使用の実態を明らかにするべく、アンケート調査を実施することとした。これにより極端な事例ではなく、より一般的・平均的な学生の状況が明らかになるはずである。

社会学において大学生のスマートフォン使用の問題を最初に取り上げたのは小片聖である。小片は(省略)(2001:253)と述べ、スマートフォンは大学生にとって有害でしかないと主張した。同じ趣旨の議論としては(省略)。その一方で(省略)というアプローチも試みられた。例えば新沼知沙希は(省略)。

ここで紹介してきた議論はいずれもミクロな視点からの事例紹介をもとにした議論である。それは確かにスマートフォンの持つ危険性の一側面を明らかにした。しかしその危険性がどの程度の広がりを持つのか、大学生全般にどのように当てはまるのかについてはいまだ不確かなままなのである。これまでの議論の中で欠落しているのはそうした大学生一般の状況を把握するためのマクロな視点からの調査であり、本論文はそれを試みる。

本論文では○○大学在学生に対してスマートフォン使用に関するアンケート調査を実施した。2024年の「○○大学学生名簿」1/4の学生を無作為抽出した。該当者は専用のウェブページで回答した。その際学生番号とパスワードでのチェックを行い、重複回答などが起こらないようにしている。調査票の内容は付録のとおりであり、

  1. 1日あたりのスマートフォン使用時間
  2. 回答当時のGPA
  3. 講義時間中スマートフォンをどの程度使用するか

を中心に質問している。

本論文ではさらに授業担当者に対して、講義中にスマートフォンがどの程度使用されていると認識しているか、そして講義中のスマートフォン使用と講義内容理解との関連についてどう考えているのか、についてインタビュー調査を実施した。これによりスマートフォンの使用が大学内においてどのような位置づけを持っているのかを教員側・学生側双方の認識のズレを明らかにする。

2.1 授業中のスマホいじり-教員インタビューより
学生は授業中もスマートフォンを触り、講義を聴いていない
授業担当者インタビュー
「授業中にスマホを弄っていて講義を聴かない」
2.2 スマホいじりは学力に悪影響を及ぼすか-学生に対するアンケート調査より
授業中にスマホを使用する学生は好成績を得る
スマホ使用と単位取得に関するアンケート
  • スマホ使用時間(SNS使用時間)とGPAに相関なし
  • 授業中スマホの使用度とGPAに正の相関(使用頻度が高いほど好成績)
2.3 授業中のスマホ活用-アンケート調査の自由記述より
授業中にスマホを使用するのは授業に参加するためである
授業中のスマホ使用内容についての自由記述
「授業中に分からない用語があればスマホで調べる。分からない用語をそのままにしておくより授業内容が理解できる」
2.4 教員と学生の意識のズレ
教員の認識を超えて学生は授業にスマホを有効活用している

「主張A」と「主張B」の対立は「主張C」により解決される。主張Aにおける授業担当者の「理解」は学生の行為を正しく見られてはいなかった。

3 おわりに

本論文では、学生のスマートフォン使用と学力達成について、教員側の主観からではなく、量的な調査にもとづいた実態を明らかにした。授業中にスマートフォンを使用するのは、ただ授業を聞かず私的な目的で使用するだけではなく、むしろ授業内容をよりよく理解するために用いられることが多くある。その結果として授業中にスマートフォンを使用する頻度・時間が一定長ければ、授業内容理解にも正の相関があることを示した。

大学内におけるスマートフォン使用を制限しようとする主張に対して、本論文の結果が示唆するのはそうした施策は逆効果になるのではないかという懸念である。むしろ授業内で教員も学生のスマートフォン利用を積極的に行わせるような方策を考え、取り入れるべきではないだろうか。

しかし本論文では朝椿大学文系学部学生に対する調査を行っただけであり、理系学部においては講義の進め方や、授業中のスマートフォン使用のあり方も別なものとなるかも知れない。

こうした理文の比較については今後の課題としたい。

解答例

スマートフォンの普及がもたらす大学生の学力の影響
0 はじめに

本論文は学生のスマートフォン使用が授業内容理解にポジティブな影響をあたえていることを主張する。最初に大学生のスマートフォン使用に関する従来議論を振り返り、その議論の限界を提示する(1)。次に教員に対するインタビューの内容を紹介し、スマートフォン使用に対してネガティブな影響が懸念されていることを示す。(2.1)。一方学生のスマートフォン使用に関する量的調査結果によりスマートフォン使用の持つポジティブな影響が出ていることを示す。(2.2)。教員の認識と学生の実態の乖離を理解するデータを提示する(2.3)。これにより学生のスマートフォン利用に対する教員の誤解を明らかにする(2.4)。最後に学生の授業中におけるスマートフォン使用の意義を再評価し、大学授業におけるスマートフォンの位置づけを見直す(3)。

研究課題:論文原稿初稿(docx形式)

これまで執筆してきた論文(「おわりに」:最終課題:論文原稿(結論)(docx形式))の「はじめに」を書け。また必要があればタイトルをさらに修正せよ。