「おわりに」(p.178,240)
本論で明らかにした研究成果(論文の主張)を問題の背景のなかに再び位置付け直し、より一般的な(広い)形で主張を纏める(cf.論文の流れ)。
「おわりに」の章の構成
- 結果
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「規定文」を中心に論文の主張を問題の背景および主張の論証過程とともにまとめる。
- 意義
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この論文が実社会および学術分野へどのような貢献を果たしたか、あるいは果たしうるかを主張する。
※ほぼハッタリ
- 限界
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この論文において、字数、時間、資料・データの関係でやれれば良かったけれどできなかったことを挙げる。
※「んなもんできるか!」と思っても書く。
- 課題
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「限界」で書いた事柄のカバーをするぞという次の研究への示唆。
※できるわけもやるわけもないけどハッタリで書く。
「おわりに」記述例(p.179)
- 結果
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本論文では、戦後日本の料理漫画では圧倒的に男性が料理をしていることを明らかにした。これは、料理漫画そのものが、ほとんどすべて男性向けに書かれているためである。したがって、料理漫画では女性はしばしば母親、妻、恋人といった<親しい傍観者>の位置をあたえられ、料理の腕も主人公である男性よりも劣っているのが常である。
- 意義
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これは、現在一般的にいわれる「料理は女性がするもの」「日本の男性は家事をしない」という社会通念に一定の修正を迫るものであろう。
- 限界
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本論文では料理漫画のみを取り上げた。同時期の男性向け雑誌の食べ歩き記事や、男性向けの料理本など、関係の深いほかのメディアには触れていない。
- 課題
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料理漫画と男性向けのより全般的な料理情報の関係については今後の課題としたい。
※実際に論文を書くときは「結果」「意義」…といったラベルは不要
例題
論文概略
- 1 問題意識の所在
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本論文はスマートフォンの長時間使用が学力達成にどのような影響をもたらすのかを明らかにすることを目的とする。
大学生のスマートフォン依存問題に関してはこれまでも多数の言及がなされ、大学内でのスマートフォン使用の制限を求める世論を形成してきた。たとえば2012年5月28日には産売新聞が3面にわたる特集記事を掲載し、大学生のスマートフォンの使用の弊害を訴えた。それを皮切りに新聞や週刊誌でこの問題が多数取り上げられるようになっている1)。こうした議論を受けて、学術的にも様々な議論がなされてきた。情報倫理学会では(省略)。また社会学においても(省略)。こうした議論の多くはスマートフォン使用のマイナス面を強調してきた。
しかしこうした議論の多くはミクロな視点に止まってきた。特定の事例を取り上げ、問題の大きさが主張されることが多く、平均的な学生のスマートフォン使用の実態が反映されていたとは言いがたい。
社会学においても大学生のスマートフォン使用の問題は主にミクロな視点からの事例紹介を元にした議論が中心であった。例えばこの問題をはじめに取り上げた小片聖は(省略)(2012:253)と述べ、スマートフォンは大学生にとって有害でしかないと主張した。同じ趣旨の議論としては(省略)。その一方で(省略)というアプローチも試みられた。例えば新沼知沙希(2013: 33)は(省略)。こうした議論は確かにスマートフォンの持つ危険性の一側面を明らかにした。しかしその危険性がどの程度の広がりを持つのか、大学生全般にどのように当てはまるのかについてはいまだ不確かなままなのである。
本論文が目指すのはよりマクロな視点からの議論である。大学生のスマートフォン使用の実態を明らかにするべく、アンケート調査結果を用いることとした。これにより極端な事例ではなく、より一般的・平均的な学生の状況が明らかになるはずである。
本論文はスマートフォンの使用が大学内においてどのような位置づけを持っているのか、教員側・学生側双方の認識のズレを明らかにする。
まず学生側の認識を見るために朝椿大学在学生に対してスマートフォン使用に関するアンケート調査結果を参照する。2019年の「朝椿大学学生名簿」から1000人の学生を無作為抽出した。該当者は専用のウェブページで回答した。その際学生番号とパスワードでのチェックを行い、重複回答などが起こらないようにしている。回収率は80%である。
調査票の内容は付録のとおりである。
本論文ではその中でも特に
- 1日あたりのスマートフォン使用時間
- 講義時間中スマートフォンをどの程度使用するか
に着目する。
次に授業担当者の認識を見るべく、小野田(2017)の研究を参照する。小野田は授業担当者を対象としたアンケート調査を実施し、講義中にスマートフォンがどの程度使用されていると認識しているか、そして講義中のスマートフォン使用と講義内容理解との関連についてどう考えているのか、を明らかにした。
こうした作業を通じて本論文は大学教育におけるスマートフォンの功罪を学力面から明らかにし、スマートフォンを大学教育においていかに有効活用しうるかの手がかりを得ることを目標とする。
- 2.1 授業中のスマホいじり-教員インタビューより
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- 学生は授業中もスマートフォンを触り、講義を聴いていない
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- 授業担当者インタビュー
- 「授業中にスマホを弄っていて講義を聴かない」
- 2.2 スマホいじりは学力に悪影響を及ぼすか-学生に対するアンケート調査より
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- 授業中にスマホを使用する学生は好成績を得る
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- スマホ使用と単位取得に関するアンケート
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- スマホ使用時間(SNS使用時間)とGPAに相関なし
- 授業中スマホの使用度とGPAに正の相関(使用頻度が高いほど好成績)
- 2.3 授業中のスマホ活用-アンケート調査の自由記述より
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- 授業中にスマホを使用するのは授業に参加するためである
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- 授業中のスマホ使用内容についての自由記述
- 「授業中に分からない用語があればスマホで調べる。分からない用語をそのままにしておくより授業内容が理解できる」
- 2.4 教員と学生の意識のズレ
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- 教員の認識を超えて学生は授業にスマホを有効活用している
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「主張A」と「主張B」の対立は「主張C」により解決される。主張Aにおける授業担当者の「理解」は学生の行為を正しく見られてはいなかった。
上記「論文概略」に対応する「おわりに」を書け。
フォーマット
3 おわりに
- 結果
- 意義
- 限界
- 課題
課題:男性の子育て
論文概略
- 論文の目的
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現代日本において男性の子育てに対する役割期待が限定づけられていることを明らかにし、少子化を食い止める手がかりを得る
- 問題の意義と背景
- 少子化の原因は女性のライフスタイルの変化だといわれる。この議論では通常男性の役割は無視されている。
- 研究方法
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- 新聞や雑誌に描かれる男性の子育てのイメージについて調べてみた。
- 新聞や雑誌などのメディアが、男性の子育てをどのように描いているかを調べる
- 論文構成
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- 子育てを女性の役割に限定づけて、女性のライフスタイル論で子育てを論じてきたこれまでの研究を振り返り、その限界を提示
- 近年の主要新聞・総合週刊誌・漫画雑誌(コミック)の中から男性の子育てに関する記述を集め、現代日本が男性の子育てをどのようにイメージしてきたかを検証
- この研究から得られた現代日本における男性の子育てイメージの結果を踏まえて、少子化対策にどのような知見がもたらされるかを検討
上記「論文概略」に対応する「おわりに」を記述例を参考にして書け。
解答例
「…」の部分を適宜加筆して「おわりに」を完成させよ
おわりに
- 結果
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本論文では、現代日本の新聞・雑誌では男性が子育てをすることに対して極めて貧弱なイメージでしか描かれていない…(「論文概略」の規定文の内容をこれまでの議論の内容を踏まえて具体化する)…ことを明らかにした。男性は子育ての主体として描かれることは少なく、女性(母親)の補助的な存在として位置付けられているに過ぎない。さらにここ数年流行の兆しを見せている「イクメン」もまた男性が補助的な役割を担うだけで、必要十分な役割を果たしているものとして喧伝しているに止まることを指摘した。
- 意義
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男性を子育て場面において従属的な位置に安住させることにより、女性の子育てへの負担は一向に減ることがない。本論文が提示するのは男性の子育てへの限られた関与を承認するこうした社会のあり方が少子化をもたらす要因の一つである…(「少子化問題」に対するこの論文の意義を大胆に主張する)…ということである。
- 限界
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しかし本論文では現代日本の言説研究に止まり、他国や過去の日本との比較研究にはいたらなかった…(現代日本だけしか調べていないということは…)…。たとえばジェンダー差が少ないとされている国々の状況と比較をすればさらなる知見が得られたものと思われる。
- 課題
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こうした国際比較については今後の課題としたい。
研究課題:論文原稿(結論)(形式)
本論の構成:研究課題:論文原稿(本論)(形式)に「おわりに」を追記せよ。