データを「解釈」する
実証研究における研究手法とデータの種類
データを読む=「解釈」
論点が適切であるということは、主張とそれを支えるエビデンスとしてのデータのセットが整合しているということである。主張にあったデータ収集し、収集されたデータから主張を引き出す、という往復運動が必要となる。
データを読み取り、そこから主張を引き出す時に必要なのが「解釈」である。データはそれ固有の文脈(コンテキスト)の上に置かれ、その文脈により、解釈は変化する。解釈は様々な幅(解釈の余地)を持つ。解釈の余地が狭い方がより客観的な主張を引き出しやすい。
解釈は大きく二つの段階に分けられる。
- 記述・推測的解釈…データ自身が語っている内容を適切に読み取り、記述する。
- 批評的解釈…データが置かれている文脈性を統制しつつ、データの背後にある構造を読み取る。
「解釈」はそれを客観的にするために様々な理論によって支えられる。量的調査データにも質的調査データにもそれぞれそれに応じた理論がある。
データの種類 | データ収集 | 文脈依存 | 解釈の余地 | 理論 | |
---|---|---|---|---|---|
量的調査データ | 集めるのに厳密な手続き | データ収集時の文脈性からは独立 | 狭い | 統計 | 記述・推測的→批評的解釈 |
質的調査データ | 比較的自由 | データ収集時の文脈性にも依存 | 広い | テキストクリティーク | 批評的解釈 |
量的調査データも質的調査データも文脈性は重要だが、とりわけ質的調査データにおけるデータ収集時の文脈の読み取りには特段の慎重さが求められる。そのためにはテキストクリティークに基づく「批評的解釈」がポイントとなる。量的調査データは統計理論を元にした「記述・推測的解釈」を軸として、それをベースに「批評的解釈」を行う。
導入問題
Kさんは両親が高校生くらいだったころの親と子の関係について調べようと考えています。お母さんに尋ねたところ、ちょうど高校生のころ新聞部でアンケートをとったことがあるといって押入れから25年前の新聞部の会議録を探し出してくれました。
わたしたちの高校の生徒男女それぞれ100人にアンケートを配布し、下のような結果を得ました。
表1 思春期の高校生に対する親の干渉 男子 女子 帰宅時間について
両親は厳しいか厳しい 30% 厳しい 22% 厳しくない 62% 厳しくない 40% どちらともいえない 8% どちらともいえない 38% 交友関係について
両親は厳しいか厳しい 47% 厳しい 36% 厳しくない 20% 厳しくない 42% どちらともいえない 33% どちらともいえない 22% 進路に関する自分の意思は
両親に尊重されているか尊重されていない 24% 尊重されていない 85% 尊重されている 45% 尊重されている 12% どちらともいえない 21% どちらともいえない 3% 元データ
※データは架空新聞の見出し案
- 意外!男子生徒の親の方が女子生徒の親よりも厳しい!
- 両親と衝突する男子生徒たち。
- 娘の帰宅時間を気にしない親たち。
問い
- 問題文中から読み取れる方法でこのデータが収集されたとすると、このデータはどのように用いることが出来るか、出来ないか、その限界を考察せよ
- 量的調査でこのようなデータをあらたに収集する時、どのような手続きが求められるか
- 適切な手続きでこのようなデータが集められたとした時、次にどのような手続きが求められるか
解答例
- 量的調査データを収集する際の手続きを踏んでいないため、質的調査データとして用いる必要がある。
- 層別無作為抽出法
- クロス集計表の独立性の検定を行い、それに基づいて記述・推測的解釈を行う。