アンケート調査データの集計
導入問題より(p.174)
Kさんは両親が高校生くらいだったころの親と子の関係について調べようと考えています。お母さんに尋ねたところ、ちょうど高校生のころ新聞部でアンケートをとったことがあるといって押入れから25年前の新聞部の会議録を探し出してくれました。
わたしたちの高校の生徒男女それぞれ100人にアンケートを配布し、下のような結果を得ました。
表1 思春期の高校生に対する親の干渉 男子 女子 帰宅時間について
両親は厳しいか厳しい 30% 厳しい 22% 厳しくない 62% 厳しくない 40% どちらともいえない 8% どちらともいえない 38% 交友関係について
両親は厳しいか厳しい 47% 厳しい 36% 厳しくない 20% 厳しくない 42% どちらともいえない 33% どちらともいえない 22% 進路に関する自分の意思は
両親に尊重されているか尊重されていない 24% 尊重されていない 85% 尊重されている 45% 尊重されている 12% どちらともいえない 21% どちらともいえない 3% ※データは架空 新聞の見出し案
- 意外!男子生徒の親の方が女子生徒の親よりも厳しい!
- 両親と衝突する男子生徒たち。
- 娘の帰宅時間を気にしない親たち。
問い
- 問題文中から読み取れる方法でこのデータが収集されたとすると、このデータはどのように用いることが出来るか、出来ないか、その限界を考察せよ
- 量的調査でこのようなデータをあらたに収集する時、どのような手続きが求められるか
- 適切な手続きでこのようなデータが集められたとした時、このデータはどのように解釈できるか
解答例
- 量的調査データを収集する際の手続きを踏んでいないため、質的調査データとして用いる必要がある。
- 層別無作為抽出法
- クロス集計表の独立性の検定を行い、それに基づいて記述・推測的解釈を行う。
クロス集計
- 問1 帰宅時間について両親は厳しいか
- 1.厳しい 2.どちらとも言えない 3.厳しくない
- 問2 交友関係について両親は厳しいか
- 1.厳しい 2.どちらとも言えない 3.厳しくない
- 問3 進路に関する自分の意思は両親に尊重されているか
- 1.尊重されていない 2.どちらとも言えない 3.尊重されている
このアンケートの回答をまとめたものが「元データ」である。このデータを集計して、分析を行う。
- 性別にどう回答されたか、クロス集計を行う。
- 性(ジェンダー)が異なることで回答傾向が異なる(回答傾向はジェンダーに従属している)と言えるかどうか、クロス集計表の独立性の検定を行う。
- 性別にどういう解答傾向があるかを読み取るため、残差分析を行う。
- 結果を見やすく示すため、比率計算を行う(→導入問題)。
※比率の方向に注意(行方向・列方向) - 結果を見やすく示すため、比帯グラフを描く。
比率計算に合わせる。
スクリプト
#データ読み込み data <- read.csv("http://kyoto-edu.sakura.ne.jp/weblesson/writing/lesson/2-10-1.csv", fileEncoding = "utf-8") #変数設定 summary(data) gender <- data$性別 q1 <- data$帰宅時間 q2 <- data$交友関係 q3 <- data$進路 #クロス集計(性別×回答) source("http://kyoto-edu.sakura.ne.jp/weblesson/statistics/socialStatisticsBasic.R", encoding="UTF-8") crossTable_q1 <- crosstab(gender,q1) crossTable_q2 <- crosstab(gender,q2) crossTable_q3 <- crosstab(gender,q3) #独立性の検定ほか print(result_q1 <- summary(crossTable_q1)) print(result_q2 <- summary(crossTable_q2)) print(result_q3 <- summary(crossTable_q3)) #ファイルへの書き出し write.output(result_q1,"output.crosstable_q1.csv") write.output(result_q2,"output.crosstable_q2.csv") write.output(result_q3,"output.crosstable_q3.csv") #帯グラフ-一行ずつ実行する barplot(t(result_q1$row.ratio), horiz=T, legend=colnames(result_q1$row.ratio)) barplot(t(result_q2$row.ratio), horiz=T, legend=colnames(result_q2$row.ratio)) barplot(t(result_q3$row.ratio), horiz=T, legend=colnames(result_q3$row.ratio))
主張テンプレ
本校在籍生徒に関して、親の干渉がどの程度強いかについて男女によって意識が異なるかどうかをクロス集計により検証する。
まずは帰宅時間に関して分析を行う。
1.厳しい | 2.どちらとも言えない | 3.厳しくない | |
---|---|---|---|
男子 | 30% | 8% | 62% |
女子 | 22% | 38% | 40% |
![](/weblesson/writing/img/band_graph_data02_01.png)
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(◆)=●, p<.01, V=▲)、男女によって帰宅時間に関して両親が厳しいと感じる度合いに差があると言える。
残差分析より、女子生徒より男子生徒の方が帰宅時間に関して両親は「厳しくない」と認識する傾向が見られる。女子生徒は「どちらとも言えない」と回答する傾向が強い。
次に交友関係に関して分析を行う。
図表を貼る
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(◆)=●, p<.01, V=▲)、男女によって交友関係に関して両親が厳しいと感じる度合いに…。
残差分析より、…。
最後に進路に関して分析を行う。
図表を貼る
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(◆)=●, p<.01, V=▲)、男女によって進路に関する自分の意思が両親に尊重されていると感じる度合いに…。
残差分析より、…。
以上より、…
- ◆…自由度
- ●…Χ2値
- ▲…効果量
新聞の見出し案の評価
- 意外!男子生徒の親の方が女子生徒の親よりも厳しい!←女子生徒は交友関係についてのみ男子生徒よりも親の干渉を意識するものが少ない(帰宅時間と進路に関しては女子生徒の方が親の干渉を意識する傾向がある)
- 両親と衝突する男子生徒たち。←?
- 娘の帰宅時間を気にしない親たち。←女子生徒は男子生徒より帰宅時間に関して親の干渉に対する評価を定められていない傾向がある
分析結果を踏まえて、データから得られた知見に見合った主張を考えてみよう。
解答例
- 主張
-
25年前の当該高校在籍生徒に関して
- 女子生徒は進路については親の干渉が強いと感じている
- 男子生徒は交友関係においては親の干渉が強いと感じている
本校在籍生徒に関して、親の干渉がどの程度強いかについて男女によって意識が異なるかどうかをクロス集計により検証する。
まずは帰宅時間に関して分析を行う。
1.厳しい | 2.どちらとも言えない | 3.厳しくない | |
---|---|---|---|
男子 | 30% | 8% | 62% |
女子 | 22% | 38% | 40% |
![](/weblesson/writing/img/band_graph_data02_01.png)
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(2)=25.54, p<.01, V=0.36)、男女によって帰宅時間に関して両親が厳しいと感じる度合いに差があると言える。
残差分析より、女子生徒より男子生徒の方が帰宅時間に関して両親は「厳しくない」と認識する傾向が見られる。女子生徒は「どちらとも言えない」と回答する傾向が強い。
次に交友関係に関して分析を行う。
1.厳しい | 2.どちらとも言えない | 3.厳しくない | |
---|---|---|---|
男子 | 47% | 33% | 20% |
女子 | 36% | 22% | 42% |
![](/weblesson/writing/img/band_graph_data02_02.png)
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(2)=11.46, p<.01, V=0.24)、男女によって交友関係に関して両親が厳しいと感じる度合いに差があると言える。
残差分析より、男子生徒より女子生徒の方が交友関係に関して両親は「厳しくない」と認識する傾向が見られる。
最後に進路に関して分析を行う。
1.尊重されていない | 2.どちらとも言えない | 3.尊重されている | |
---|---|---|---|
男子 | 24% | 31% | 45% |
女子 | 85% | 3% | 12% |
![](/weblesson/writing/img/band_graph_data02_03.png)
このクロス集計表はPeasonχ2検定により1%水準で有意であり(χ2(2)=76.30, p<.01, V=0.62)、男女によって進路に関する自分の意思が両親に尊重されていると感じる度合いに差があると言える。
残差分析より、男子生徒より女子生徒の方が進路に関して自分の意思は両親に尊重されていないと認識する傾向が見られる。
以上より、帰宅時間と進路に関して男子生徒は女子生徒よりも親の干渉を意識する傾向は弱い。女子生徒は交友関係に関しては男子生徒よりも親の干渉を意識する傾向は弱いが、進路に関しては親の干渉を意識する傾向が強い。
テキストクリティーク
量的調査データの分析としてはここまでで終了である。しかしここで得られたデータは25年前の特定の高校のデータに過ぎない。そこから社会学的な知見(より一般的な高校生像)を得るにはどうすればよいだろうか?
ここからは質的調査データとしての手続きが必要となる。すなわちこの高校が日本の高校の中でどのような位置づけを持っているのか、この高校から得られたデータはどのような偏りを持っているものなのか、を分析し、解釈していくのである。
- この高校の地理的状況
- この高校の25年前の社会的位置付け-進学校?
- この高校の沿革(歴史)-元々は男子校だった?女子校だった?最初から共学だった?
- 25年前の社会状況
- …