ライティング実習2B 3組

2019年度 後期 火03 13:30-15:00 瀬田6-調査実習室

序論

序論の位置付け・役割(p.148,182)

序論IntroductoinはPREPフレームワークの「Reason」に相当する。その果たすべき最も重要な役割は、自分の問題意識(とその背景にあるコンテキスト)と読み手のコンテキストとをすりあわせすることである。この章で自分の主張が相手にとっていかに価値があるものかを示すことになる。

PREPにおける序論

「はじめに」

序論

本論

「おわりに」

Point

Reason

Evidence

Point

自分のコンテキスト

相手のコンテキスト

「相手のコンテキスト」における相手というのは個別具体的な特定の読者(指導教員など)ではなく、想定される読者一般である。従ってそのコンテキストとは

  1. 現在の社会状況一般
  2. この論文が対象とする(学術的)分野

のことを指す。特に後者が重要である。これまで積み重ねられてきた当該分野の議論の中でこの論文がどういう意義を持つのかを示すのが「序論」の役割である。

「これまでの研究では○○を中心に論じられてきた。しかしそれでは△△という点が軽視されてしまう。そこで本稿では××を主張する」

そしてその当該分野での議論を具体的に整理して紹介するのが「序論」の中で行う「先行研究レビュー」である。

最後、「本論」に入る前に研究方法をまとめて「序論」を締める。

※「自分のコンテキスト」は「主張」の中に現れているのであって、それ以上論文の中で説明する必要は無い。それをグダグダ書いたところでそのあなたの事情は読み手にとってはどうでも良いことなのである(「私語り」)。

×「私が□□をテーマとして取り上げたのは私が小学生の頃に…」

提案書の場合

相手(顧客)の抱える状況を整理し、自社商品がそれにマッチしたものであることを示すパートとなる。

「御社は○○という強みを生かしてこれまで成長されてきました。しかし△△の部分で他社に先行を許してしまっています。そこで××というソリューションをご提案いたします」

×「この××を売らないと弊社今季利益目標が達成されないので頑張って営業に来ました」

序論の構成(p.183)

  1. 問題提起(Pointの繰り返し)
    -論文の目的を提示する
  2. 問題の背景(Reason)
    • 現状認識(「こんな風にいわれているやん」)
      • 社会状況一般
        -従来なされてきた議論を一般的な次元で提示し、その限界を指摘し、自身の主張の意義を示す。
      • 先行研究レビュー(p.158,186)
        -従来なされてきた議論のなかから学術的なものを具体的に紹介し、整理する(二次資料)
    • 問題点(「それってここがおかしいんとちゃうん?」)
    • 打開策(「それに対してこの論文ではこんなことを言うたるねん」)
  3. 研究方法(データ・資料-一次資料 p.200)と目標(Evidenceへのつなぎ)
    1. 研究方法概要
    2. 研究対象・データ収集の方法
    3. 分析手法
    4. 研究の目標

課題

問1 少子化の原因

問題の背景
現状認識

少子化の原因は女性のライフスタイルの変化だといわれる。

問題点

この議論では通常男性の役割は無視されている。子供は女性だけで産み育てるものではないのにおかしい。

打開策

そこで、この研究では新聞や雑誌に描かれる男性の子育てのイメージについて調べてみた。

新聞や雑誌などのメディアが、男性の子育てをどのように描いているかを調べることで、少子化を食い止める新たな道筋が見つかるかも知れないからである。

上記メモ(p.150)の内容から、序論を書きたい。

このメモは本来「問題の背景」パートについて書かれたものであるが、実際に書かれている内容はそれよりも少しカバレッジは広い。「問題提起」「問題の背景」「研究方法と目標」に情報を整理し、再構成せよ。

問題提起
目的
問題の背景
現状認識
問題点
打開策
研究方法と目標
方法
目標

問2 スマートフォン普及と学力

タイトル
「スマートフォンの普及がもたらす大学生の学力の影響」
規定文(仮説)
スマートフォンを長時間使用し続けることは学力達成にプラスの影響を及ぼす
研究方法-学生に対するアンケート(量的調査)

スマートフォン使用時間と学力達成との関連

  • スマートフォン使用時間が長い学生は勉学に割く時間が本当に少ないのか
  • スマートフォン使用時間が長い学生は単位取得率が低いのか

調査項目

  1. SNS使用時間-量的調査
  2. 大学の講義での過ごし方-量的調査
  3. 大学の成績(GPA)-量的調査
  4. 大学教員対象の調査結果(小野田 2017)。学生の講義中のスマートフォン使用と授業内容習得との関連について-理論研究

上記研究計画をもとに「序論」を書きたい。その際、「問題の背景」について、以下にまとめた。

問題の背景
現状認識
社会状況一般

大学生がスマートフォン長時間使用することに対して否定的な見解

  1. 学生がスマートフォンを長時間使用すると学力低下に繋がるという「常識」の存在

    スマートフォン使用のマイナス面が強調

  2. ⇒大学内でのスマートフォン使用の制限を求める世論を形成
具体的事例
  1. 2018年5月28日産売新聞の3面にわたる特集記事…大学生のスマートフォンの使用の弊害を主張
  2. ⇒新聞や週刊誌でこの問題が多数取り上げられる
  3. ⇒学術的な議論:情報倫理学会・社会学会
先行研究

社会学においてミクロな事例紹介を中心とした議論が展開

  • 小片聖(2012:253)…スマートフォンは大学生にとって有害でしかないと主張
  • 同趣旨の議論多数
  • 新沼知沙希(2013: 33)…別アプローチ

問題点
  1. 特定の事例を取り上げ、問題の大きさが主張されることが多い
  2. 平均的な学生のスマートフォン使用の実態が反映されていたとは言いがたい

⇒いずれもミクロな視点からの事例紹介

⇒大学生一般の状況を把握するためのマクロな視点からの調査が欠落している

打開策

本当にスマートフォン使用時間が長くなると学力達成に悪影響が出るのか。それがデータによって裏付けられるのかどうか、検証する

これらを元に序論を書く。********に加筆せよ。

1 大学教育におけるスマートフォンの功罪
問題提起

********

現状認識

********。これらの議論は学生がスマートフォンを長時間使用すると学力低下に繋がることを前提とし、その結果として大学内でのスマートフォン使用の制限を求める世論を形成してきた。たとえば2012年には産売新聞が3面にわたる特集記事『大学生が危ない!』を掲載し、大学生のスマートフォンの使用の弊害(『産売新聞』2012.5.28朝刊)を訴えた。それを皮切りに新聞や週刊誌でこの問題が多数取り上げられるようになっている1)

こうした議論を受けて、学術的にも多くの議論が展開された。情報教育学会では……。情報倫理学会では……。

こうした議論の多くはスマートフォン使用のマイナス面を強調してきた。そこには教育関係者を中心とした携帯電話は特殊なものであるという意識(Táborská 2009=2017: 131)があったこともまた確かである。

社会学においても大学生のスマートフォン使用の問題は主に********を元にした議論が中心であった。例えばこの問題をはじめに取り上げた小片聖はスマートフォンは大学生にとって有害でしかないと主張する。

パーソナルコンピュータの普及が大学生の学力に悪影響をもたらすことは明白である。……パーソナルコンピュータの「お手軽さ」のために、学習内容が紙媒体に比べて、利用者に記憶しにくく、また理解しにくいのである。(小片 2012:253)

同じ趣旨の議論としては……。

その一方で……というアプローチも試みられた。例えば新沼知沙希はITの普及が情報間格差をもたらすことを懸念する。

デジタルデバイスを学校教育で扱う際に、もっとも配慮しなければならないのはデジタルデバイドの問題である。デバイスを使いこなせる人と使いこなせない人との間には深刻な格差が生じる。そしてこの格差は実際のところ階級問題なのだ。(新沼 2013: 33)

これらの議論は確かに教育の場においてスマートフォン依存がもたらす危険性の一側面を明らかにした。教育現場での実感とそう議論であったがゆえに、十分説得力を持つものとして、広く受け入れられた。

しかしこの危険性がどの程度の広がりを持つのか、大学生全般にどのように当てはまるのかについては十分明らかにされているとは言いがたい。

問題点

********。特定の事例を取り上げ、問題の大きさが主張されることが多く、平均的な学生のスマートフォン使用の実態が反映されていたとは言いがたい。大学生一般の状況を把握するためのマクロな視点からの調査が欠落していたのである。

打開策

本論文が目指すのはよりマクロな視点からの議論である。本当にスマートフォン使用時間が長くなると学力達成に悪影響が出るのか、それがデータによって裏付けられるのかどうか、検証する。大学生のスマートフォン使用の実態を明らかにするべく、アンケート調査結果を用いることとした。これにより極端な事例ではなく、より一般的・平均的な学生の状況が明らかになるはずである。

研究方法と目標

本論文はスマートフォンの使用が大学教育においてどのような位置づけを持っているのかを明らかにする。本調査結果と先行研究を参照することにより、スマートフォンの持つ意味について、教員側・学生側双方の認識にズレがあることを示す。

まず********。その中でもスマートフォン使用時間と学力達成との相関に着目する。スマートフォン使用時間が長い学生は勉学に割く時間が本当に少ないのか、そして単位取得率が低いのか、本調査結果より明らかになる。

次に授業担当者の認識を見るべく、********の研究を参照する。小野田は授業担当者を対象としたアンケート調査を実施し、講義中にスマートフォンがどの程度使用されていると認識しているか、そして講義中のスマートフォン使用と講義内容理解との関連についてどう考えているのか、を明らかにした。

こうした作業を通じて本論文は大学教育におけるスマートフォンの功罪を学力面から明らかにし、スマートフォンを大学教育においていかに有効活用しうるかの手がかりを得ることを目標とする。