1-03 語句を明確に使う
以下の例文(1-16)を日本語として読みやすく修正せよ(提出はをクリック)。
意味の重複を避ける(1.1)
- 今後、解決方法としてどのようにすればよいかを述べることにする。今後の解決方法を述べる。
- しかし、1990 年9月に起きた株価の大幅な下落があった。しかし、1990年9月に株価は大幅に下落した。
- 人は自らが考案した道具をもてあましているように見える。ITの潜在能力は計り知れない。それをいかに効果的に社会に役立てるかは、使いこなす人間自身にかかっている。人は自らが考案した道具をもてあましているように見える。ITの潜在能力は計り知れない。それをいかに効果的に社会に役立てるかは、それを使う人間自身にかかっている。
※「使いこなす」は「効果的に使う」という意味を含んでいる。 - 「ストリート・チルドレンの現状と解決策に関する一考察」「ストリート・チルドレンの現状と解決策」
※論文という形式の中に「に関する一考察」は含まれる
用語は一貫性を持たせる(1.5)
- 表記の揺らぎ
-
- server…サーバー、サーバ
- Jürgen Habermas…ハーバーマス、ハバーマス、ハーバマス
- 用語の不統一
-
- 闘争理論、葛藤理論、紛争理論
- 同音異義語
-
- 意思、意志
- 自立、自律
- 偏在、遍在
- 日本の作文教育には、以下の三つの問題がある。一つ目には発達段階に応じた一貫した体系的な方法論を持っていない。二つ目には書き手の情緒を表現することに力点が置かれ、論理的な文章を書く技術を教えていない。三つ目には読み手の存在を意識させられておらず、文章を書く目的を提示できていない。以上三つの理由から学校教育においては、就職した後に求められる論文や報告書を書くスキルを身につけさせることが出来ていないのである。 日本の作文教育には、以下の三つの問題がある。一つ目には~。二つ目には~。三つ目には~。以上三つの問題が原因で、学校教育においては…。
- 「問題」が「理由」に変わってしまっている。長文になるとこういうことをしでかすことが良くある。
指示詞は何を指示しているのかを明確にする(1.2,1.8)
- 指示代名詞はなるべく直前のものを指すようにする
- 単数か複数かは揃える。
- 対象はなるべく具体的に指示する。
- ※文脈上何を指示しているかが明確なときは指示詞自体を省略できる
- 日本の不良債権問題は様々なところで議論がされているが、どれも決定的ではない。それは、バブル崩壊だけではない。日本の不良債権問題は様々なところで議論がされているが、どの議論も不良債権問題の決定的な原因を提示し得ていない。不良債権問題が発生した原因は、バブル崩壊だけではない。
※「決定的でない」のは議論である。「バブル崩壊だけではない」のは不良債権問題の原因である。 - 企業による不正を未然に防ぐためにはどうすれば良いのだろうか。企業組織や個人の倫理観そのものを根本的に見直し、向上させることはできるのであろうか。この問題点の要因を分析し、解決策を検討していくとする。企業による不正を未然に防ぐためにはどうすれば良いのだろうか。企業組織や個人の倫理観そのものを根本的に見直し、向上させることはできるのであろうか。企業による不正が起こる要因を分析し、解決策を検討していくとする。
※「企業による不正」がテーマである。 - プッチーニの歌劇『蝶々夫人』は、心理的な描写に重きを置いて、フレーニやカレーラスなどの歌い手によって上演されているが、彼女の奥行きのある歌声は見事である。プッチーニの歌劇『蝶々夫人』は、心理的な描写に重きを置いて、フレーニやカレーラスなどの歌い手によって上演されているが、彼女たちの奥行きのある歌声は見事である。
※もとが複数なのに「彼女」は単数である。 - 近年、アメリカの物理学者が捏造事件を起したことは遺憾である。2002年にアメリカの物理学者ヘンドリック・シェーンが捏造事件を起したことは遺憾である。
※なるべく具体的な対象を明示する(例はなんでも良い。2002年が近年か?というツッコミはご容赦)
名詞句は語間のつながりを明確にする(1.4,1.7)
名詞句のなかに名詞化した動詞を含む場合、動詞に対する主語・目的語などの関係を明確にした方が分かりやすくなる。
例)大学生の文章作成スキル伸張の障害要因の分析を行う。→大学生が文章を作成するスキルを伸ばそうとする時になにが障害となっているのか、その要因を分析する。
- 粗雑な管理体制の打破のための一対策。粗雑な管理体制を打破するための一対策。
- 確かに、バフル崩壊は根底の危機の一面があった。確かに、バブル崩壊は根底的な危機を日本社会に突きつけたという一面があった。
- 仕事の能率性を促進化させるために、根本を見直す改良観が必要である。仕事の能率を上げるために、根本から見直して改良する必要がある。
助詞・複合助詞は厳密に用いる(1.3)
助詞・複合助詞はあまり意識せず用いられることがあるが、何を使うかによって意味が明確に違うことが多い。助詞・複合助詞の運用には注意せよ。
「が」「を」「に」は各々「格」を示す助詞だが、「は」は「格」とは別に主題を示す。
主題・新情報- 「AがBである」 → Bに対してAという情報を付加する。 → Aは主語ではあるが主題ではない。
ペンが机の上にある。There is a pen on the desk.…机の上にあるのは他の物品ではなくてペンだ。 - 文脈上既に設定された主題
- 「AはBである」 → Aに対してBという情報を付加する。 → Aは主題である。
ペンは机の上にある。The pen is on the desk.…ペンは椅子の上とか引き出しの中とかではなくて、机の上にある。 - 他の話題と比較して選択された主題
- 「Aに関しては(については)Bである」 → 陳述Bの範囲を(A'・A''…ではなく)Aに限定する。 → A・A'・A''…を俯瞰するメタ視点。
ペンについては机の上にある。About the pen, it is on the desk.…他の物品はさておき、ペンの話をすれば、それは机の上にある。
- (別の論文では古い学力調査データを用いていたが、それは駄目で)学力調査データについては、最新のものを用いる必要がある。
- ごくごく一般的な言明
- 最新の学力調査データを用いる必要がある。
- 「学力調査データ」が今まさに話題となっている
- (別の論文では古い学力調査データを用いていたが、それは駄目で)学力調査データは最新のものを用いる必要がある。
- (学力調査データ以外の)他のデータとの比較で学力調査データを強調
- (他のデータは古い年度のデータを用いても構わないが)学力調査データについては最新のものを用いる必要がある。
学校教育においては、就職した後に求められる論文や報告書を書くスキルを身につけさせることが出来ていない原因は一体何なのであろうか。原因として三つの点を挙げる。
第一の点は、発達段階に応じた一貫した体系的な方法論を持っていない。(中略)
第二の点は、書き手の情緒を表現することに力点が置かれ、論理的な文章を書く技術を教えていない。(中略)
第三の点は、読み手の存在を意識させられておらず、文章を書く目的を提示できていない。(中略)
以上、原因について三つの点を挙げて説明した。
学校教育においては、就職した後に求められる論文や報告書を書くスキルを身につけさせることが出来ていない原因は一体何なのであろうか。原因を三つ挙げる。
原因の一つ目は、発達段階に応じた一貫した体系的な方法論を持っていない。(中略)
原因の二つ目は、書き手の情緒を表現することに力点が置かれ、論理的な文章を書く技術を教えていない。(中略)
原因の三つ目は、読み手の存在を意識させられておらず、文章を書く目的を提示できていない。(中略)
以上、原因を三つ挙げた。
-
学校教育においては、就職した後に求められる論文や報告書を書くスキルを身につけさせることが出来ていない原因を考える上で、さまざまな議論がなされてきた。三点指摘する。
一つ目は、作文教育と道徳教育とが混在し、作文教育が独立して体系化されていない点を問題視する教育過程論からの論点である。(中略)
二つ目は、「論理」を作文教育の軸に置くべきであるとするアカデミックライティング論からの論点である。(中略)
三つ目は、読み手に興味を持たせるテクニックを重視するビジネスライティング論からの論点である。(中略)
以上、原因について三つの論点を挙げた。
※「原因について」を生かそうとすると2.のように中身を大幅に書き換える必要がある。基本的には1.ベース(「について」は削除する)で解答を作れば良い。
概念の論理レベル(抽象度)を合わせる(1.6)
項目を列挙する際、その項目の論理レベル(抽象度)は等しくなければならない。
例)動物園にはライオン、トラ、ワシ、ニシキヘビ、哺乳類などがいる。
- 社会を見ていると、矛盾が多いことに気づく。選挙や政治の分野では殊更に感じる。社会を見ていると、矛盾が多いことに気づく。死に票が大量に出る選挙制度や国会審議の空洞化といった政治の分野で殊更に矛盾の多さを感じる。
※「選挙」は「政治」に含有される(「政治」より具体的)。 - それぞれの過程で、人間は自らがコントロールできない廃物や汚染を作り出し、自然に還元する。それぞれの過程で、人間は自らがコントロールできない廃物を作り出し、それを自然に還元し、汚染させる。
※「廃物」が自然を「汚染」するのである。
課題0
シチュエーションAとシチュエーションBを表現する文の組み合わせとして適切なものを選択せよ。
- 日本語
-
- ペンは机の上にある。
- ペンが机の上にある。
- 英語
-
- There is a pen on the desk.
- The pen is on the desk.
課題1
以下の文章から、語句の使い方で問題ある箇所を修正せよ。
- 授業でμ国で死刑制度が廃止された経緯について色々知って、私の住む日本の死刑制度について考えてみることにした。授業を聞くまでは私刑について真面目に考えることはありませんでした。死刑はあって当然というか、そういう間隔であったのだ。しかし死刑が廃止された国があるとか、世界的には死刑廃止国の方が多いという話を聞いて、今まで自分が自明視してきたことが大きく心が打ち震えるように感じたのだ。
- 死刑について知らないことばかりだということに気づかされて、もっと色々調べを進めることの重要性を鑑み、授業で μ 国の話を聞いたので、それに沿って議論を進めていく。
- μ国では無罪の人が死刑執行して、それが後で分かったということがあったそうだ。悪いことしていないのに死刑になるなんてその人はとても可哀想だと思った。私だったら耐えられないと思うのだ。そういうことがあるのなら死刑はやはりやめた方が良いんじゃないかと思った。でも日本での世論の多数派は真逆で死刑賛成の意見が圧倒的多数派らしい。
- タカーシは間接民主制的アプローチで死刑を廃止したから、手続き上は民主主義に反しているわけではなかったということだ。みんなが思っていたのと違うことを強引にやっても、結局最終的にはみんなの意見がそうなったと言うことなので、結局タカーシがやったことは間違いではなかったのだろうと思った。
課題1解答例
- 授業でμ国で死刑制度が廃止された経緯
についてを色々知って、私の住む日本の死刑制度について考えてみることにした。授業を聞くまでは私刑死刑について真面目に考えることはありませんでした。死刑制度はあって当然というか、そういう間隔感覚であったのだ。しかし死刑が廃止された国があるとかあり、さらに、世界的には死刑廃止国の方が多いという話を聞いて、今まで自分が自明視してきたことが大きく心が打ち震えるように感じたのだ間違っていたのかも知れないと思うに至った。 - 死刑について知らないことばかりだということに気づかされて、もっと色々調べを進めること
の重要性を鑑みが重要であると思い、授業で μ 国の話を聞いたので、それに沿って議論を進めていく。 - μ国では無罪の人が死刑執行
してされて、それが後で分かったということがあったそうだ。悪いことしていないのに死刑になるなんてその人はとても可哀想だと思った。私だったら耐えられないのだ。そういうことがあるのなら死刑はやはりやめた方が良いんじゃないかと思った。でも日本での世論の多数派は真逆で逆に死刑賛成の意見が圧倒的多数派らしいなのである。 - タカーシは間接民主制的アプローチで死刑を廃止したから、手続き上は民主主義に反しているわけではなかった
ということだ。みんなが思っていたのと違う世論に反することを強引にやっても、結局最終的にはみんなの意見がそうなった世論も死刑廃止を支持したと言ういうことなので、結局タカーシがやったことは間違いではなかったのだろうと思った。
課題2
以下の文章は「情報社会学概論」レポートで書かれたレポートの一部である。下記観点から修正せよ。
- 不自然な外来語や抽象的概念を置き換えよ。
- 助詞「の」が連続的に使われている箇所を修正せよ。
- 並列の関係でない概念を並列に置いている箇所があれば修正せよ。
- 意味が伝わりにくい指示代名詞があれば、書き換えよ。
- 曖昧なデータがあれば具体的な数値を調べ、置き換えよ(データは「情報社会学概論」レポートから探せる)。
- 意味が重複しているなど不要な言葉があれば書き換えよ。
- 話し言葉や俗語があれば書き換えよ。
- その他間違った言葉の使い方があれば修正せよ。
死刑制度の存廃を巡る議論については被害者およびそのステークホルダー・死刑囚双方の人権に関わる問題があり、法学や憲法との兼ね合い、社会学・心理学・バイオエシックスその他様々にプロフェッショナルな論点が提示されている。本稿ではその中からそれに関するオピニオンの影響に着目し、その動向によって死刑制度のあり方を決定づけることの限界を指摘する。
日本の死刑存続の支持世論の圧倒性は顕著であり、死刑廃止論議に関しては意見を述べ合う機会が少ない。例えば2014年11月に行われた「死刑制度に対する意識調査」では「死刑は廃止すべきである」が9.7%であるのに対して、「死刑もやむを得ない」は80.3%という結果が出ている。この後押しを背景に日本では死刑制度は維持され、「死刑廃止を推進する議員連盟」の参加議員数も30名程度に止まる。
それに対して世界のトレンドは死刑廃止に動いている。国連加盟国196カ国中、多くの国が死刑制度を完全に廃止しており、平時の死刑廃止国や法的には存置されていても死刑執行を長期的に停止するなどの実質的な死刑廃止国を含めると140カ国にも及ぶ。
ここから見えてくるのは日本国内のステータス、世論と世界の趨勢とが真っ向から対立している状況である。死刑存廃論議において世論や死刑反対論を重視する限り、死刑制度廃止はフィジビリティに乏しい。死刑廃止論に真っ先に立ちはだかるのはこの世論トレンドなのである。
こうした状況は日本の特殊性の顕現化なのであろうか。死刑廃止国では世論はそれを支持したのであろうか、あるいは世論の反対を押し切ってなされたのであろうか。後者だとすれば死刑制度廃止はいかになされたのか。それを踏まえた上で、死刑制度存置に傾く日本の世論の意味を読み直すことを試みたい。
課題2解答例
死刑制度の存廃を巡る議論については被害者およびそのステークホルダー関係者・死刑囚双方の人権に関わる問題があり、法学や憲法との兼ね合いなどに関する法学のほか、社会学・心理学・バイオエシックス生命倫理その他様々にプロフェッショナル専門的な論点が提示されている。本稿ではその中からそれ死刑制度に関するオピニオン世論の影響に着目し、その動向によって死刑制度のあり方を決定づけることの限界を指摘する。
日本の死刑存続の支持世論の圧倒性は顕著であり日本では死刑存続を支持する人が圧倒的に多く、死刑廃止論議に関してはの是非について意見を述べ合う機会が少ない。例えば2014年11月に行われた「死刑制度に対する意識調査」では「死刑は廃止すべきである」が9.7%であるのに対して、「死刑もやむを得ない」は80.3%という結果が出ている。この後押しを背景に日本では死刑制度は維持され、「死刑廃止を推進する議員連盟」の参加議員数も30名程度に止まる。
それに対して世界のトレンド趨勢は死刑廃止に動いている。国連加盟国196カ国中、多くの国102カ国が死刑制度を完全に廃止しており、平時の死刑廃止国や法的には存置されていても死刑執行を長期的に停止するなどの実質的な死刑廃止国を含めると140カ国にも及ぶ。
ここから見えてくるのは日本国内のステータス状況、世論と世界の趨勢とが真っ向から対立している状況である。死刑存廃論議において世論や死刑反対論を重視する限り、死刑制度廃止はフィジビリティ実現性に乏しい。死刑廃止論に真っ先に立ちはだかるのはこの世論トレンド動向なのである。
こうした状況は日本の特殊性の顕現化に特殊なものなのであろうか。死刑廃止国では世論はそれを支持したのであろうか、あるいは世論の反対を押し切ってなされたのであろうか。後者だとすれば死刑制度廃止はいかになされたのか。それを踏まえた上で、死刑制度存置に傾く日本の世論の意味を読み直すことを試みたい。
研究課題
- レポート修正(形式)
「外来語と専門用語を扱う」と「語句を明確に使う」を踏まえて、あなたが書いた課題素材:「情報社会学概論」レポート(形式)を修正せよ(修正すべきところがなければ未提出にせよ)。