外書購読

2004年度 前期 木04 15:15-16:45 瀬田

授業資料

Fredric Jameson The Political Unconscious

ポストモダニズム(価値相対主義)の限界とは

社会思想をめぐる対立軸を仮に「歴史・伝統・国家」対「人権・自由・市民」と捉えた場合、「左」の立場に立つ思想は徹底して「歴史」を攻撃し、その基盤・根拠のなさを暴こうとする。それ自体は「歴史」の持つ抑圧的な意味を考えれば意味深いことではあった。が、それにより生じた「価値相対主義」「シニシズム」(ポストモダンっぽい思想風土)が「人権」「自由」といった価値観をも侵食し、根拠なき「歴史・伝統」への憧れを醸成するという逆の作用を生み出した。

「伝統・歴史」と対峙するためには「価値相対主義」とは別の論理が、すなわち保守思想の「根拠」の無根拠を一般論として主張するのではなく、その「根拠」自体を含みこむより大きな根拠を掲げる必要があるのではないか。

「やつら」が間違っているのは「根拠」をでっち上げたからではない。「根拠」を通り一遍にしか見なかったからである。「やつら」のよって立つ「根拠」を生み出したものは何か、それを問うて始めて、「やつら」の思想を批判しうるのである。