Excelで学ぶ統計講座(初級)

対応ある2サンプル間の平均の差の検定

本章で用いる実習用ファイル

対応ある2サンプル間の平均の差

C工科大学で学生の一日あたりのスマートフォンの利用時間を調査した。学生を無作為で50人抽出し、一週間の平均利用時間を記録した。

調査は同じ学生を対象にある人気ゲームアプリリリース前と後の二回実施し、その結果をまとめた。

ABCDEFGH
1NoBeforeAfter平均値
21227231Before
32162164After
43293204
μ国C工科大学スマートフォン利用時間調査データ
変数
Before(比例尺度)
B2:B51
After(比例尺度)
C2:C51

このデータから人気ゲームアプリリリースの前後でスマホ利用時間が増えたと言えるか。

図表1 C工科大学学生のスマートフォン利用時間
BeforeAfter
平均値183.40197.66

問題

※今回の事例ではBefore側のデータもAfter側のデータもサンプルである。

  1. t検定を行い、有意性の確認をせよ(t値、自由度、p値)。
  2. 効果量rを求め、平均差の意義を確認せよ。
  3. ここまでで得られた知見をもとに「記述・推測的解釈」を行え。
  4. 問題文中の文脈を踏まえ、主張を簡潔に述べよ(「批評的解釈」)。
主張テンプレート

…トピックセンテンス(主張)…。C工科大学学生のスマートフォン平均利用時間は人気ゲームアプリリリースにより[増加/減少]した(t(◆)=●, p<.05,r=▲)。リリース前の平均利用時間はx、リリース後の平均利用時間はyであり、前後の平均利用時間差はzである。補足説明文など。


  • ◆…自由度
  • ●…t値
  • ▲…効果量

t検定

これまではサンプルの平均と明確に定まった基準値との比較であったが、今回はサンプル同士の平均値で比較しなければならない。その分手間がかかる、はずだが、この場合、さほど難しくはない。

比較する二つのサンプルは対応関係にある。No1のケースでは「227」だったのが「231」になった。つまり4増加している。このようにケースごとに差の計算をすることに意味がある。ということですべてのケースでBefreとAfterの差を計算する。

ABCDEFGH
1NoBeforeAfter平均値
21227231=After - BeforeBefore
32162164After
43293204
DEFGH
1平均値
24Before
32After
411
55平均値
6-1基準値0
7-1C工科大学
dif(比例尺度)
D2:D51

BeforeとAfterで差がない(帰無仮説)ということはdifの平均値が0になるということである。ということでdifの平均値と基準値0との比較をし、前回と同じt検定を行えば良い。

出力結果

FG
9サンプルサイズ50
10自由度49
11平均値14.26
12分散134.69
13標準偏差11.61
15t検定
16有意水準5%
17平均差14.26
18標準誤差1.64
19t値8.69
20棄却値2.01
21p値(≠)0.00
22p値(>)0.00
23p値(<)1.00
24信頼上限17.56
25信頼下限10.96
26効果量d1.23
27効果量r0.78

主張

t検定の結果から得られた知見をまとめよ。

アプリのリリースにより、スマートフォン利用時間は大きく左右される。C工科大学学生のスマートフォン平均利用時間は人気ゲームアプリリリースにより増加した(t(49)=8.69, p<.05,r=0.78)。リリース前の平均利用時間は183.40、リリース後の平均利用時間は197.66であり、前後の平均利用時間差は14.26である。